『朝鮮分断の起源』 小此木政夫著

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朝鮮分断の起源

『朝鮮分断の起源』

著者
小此木 政夫 [著]
出版社
慶應義塾大学出版会
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784766425451
発売日
2018/10/06
価格
8,640円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『朝鮮分断の起源』 小此木政夫著

[レビュアー] 三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

国際政治が形作った分断

 南北対立が劇的に緩和されたいま、分断国家の起源を国際政治と朝鮮に沸き起こったナショナリズムの双方から読み解く大著である。

 日本はかつて、朝鮮を併合し統治した。その日本が勝ち目のない大戦争に乗り出したことで、独立運動を行ってきた朝鮮人による「国家」の命運は、大国政治の翻弄(ほんろう)するところとなる。本書は緻密(ちみつ)な資料分析のうえに、朝鮮分断が、地政学を重視するソ連の要求と、必ずしも朝鮮半島を重視せずに大国による共同管理という理念主義的な発想を取ったアメリカの意思がぶつかり、また重なり合って生じた事態だったことを明らかにする。

 言葉を換えれば、第二次世界大戦から冷戦開始までのアメリカの理念主義的アプローチと、朝鮮「独立政府」に対する懐疑こそが、現在の朝鮮半島の構図を導いたともいえる。

 南北の政治指導者らは、そのような国際環境の干渉のもとで独立と統一の相克に引き裂かれながらそれぞれのナショナリズムに基づいて行動した。著者が指摘するように、内戦はいずれにせよ避けられなかっただろう。ただ、国際政治が現在の分断を形作ったことは確かだ。

 著者は、朝鮮分断の歴史は日本現代史と切っても切れない関係にあったと強調する。だが、日本において朝鮮分断の歴史が深入りして論じられることはあまりなかったのだと。

 日本は、敗戦後、朝鮮半島における分断国家の成立や朝鮮戦争を対岸の出来事として眺めてきた。そんな日本にとって、旧宗主国が通常通るような、「独立(戦争)」を見つめ直して活発な言論が行われる機会は訪れなかった。イギリスで「帝国を解体された」過程が繰り返し繰り返し、振り返られてきたのと対照的だ。

 昨今の日韓政府の対立を見るにつけ、逸したその機会がめぐってくることは今後もないのかもしれないが、本書は日本現代史に関わる重要な展開を詳(つまび)らかにした著作として確実に時代に残っていくだろう。

 ◇おこのぎ・まさお=1945年生まれ。慶応大名誉教授。専門は現代韓国朝鮮政治論。著書に『朝鮮戦争』など。

 慶応義塾大学法学研究会 8000円 

読売新聞
2018年12月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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