時間の定義ってなに? まだ答えが出ていない「宇宙」について知ろう

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僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない

『僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない』

著者
ジョージ・チャム [著]/ダニエル・ホワイトソン [著]/水谷 淳 [訳]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784478069547
発売日
2018/11/09
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

時間の定義ってなに? まだ答えが出ていない「宇宙」について知ろう

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

この本は、宇宙についてわかっていないことについて書いている。もう答えが出ているはずだと思っているかもしれないけれど、実はまだわかっていないいろんな大きな疑問についての本だ。

宇宙についての何か深い疑問にすごい答えが出た、そういうニュースをよく聞く。でも、答えが出てくる前にその疑問のことを聞いたことがあるっていう人、どのくらいいるだろう? 

「まだ答えが出ていない大問題」はどのくらいたくさんあるんだろう? この本はそれを書いた本、未解決の疑問を紹介する本だ。(「はじめに」より)

僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない この世で一番おもしろい宇宙入門』(ジョージ・チャム、ダニエル・ホワイトソン著、水谷淳訳、ダイヤモンド社)の冒頭にはこう書かれています。

宇宙最大の未解決問題にはどんなものがあるのか、どうしてまだ未解決なのかを説明しているということ。宇宙ではなにが起こっていて、宇宙はどんな仕組みなのか、「その手がかりがつかめているなんてとんでもない」と著者。

だから本書を読んだ結果としてわかるのも、「どうして手がかりがつかめていないのか、その手がかりくらいのもの」だというのです。

ただし、だからといって、我々がどれほど無知なのかを突きつけてがっかりさせようとしているわけではなさそうです。狙いは、「まだ探検されていない、とてつもなく広い未開の地にわくわくしてもらうこと」

宇宙の未解決の謎に1つ1つ触れるたび、それが解けたら人間にとってどんな意味があるのか、どんな驚きが隠れているのかがわかると思う。

この世界を違ったふうに見つめてもらいたい。わかっていないことが何なのかがわかれば、未来がすごい可能性に満ちているのが見えてくるのだ。(「はじめに」より)

そのアプローチは、果たしてどのようなものなのでしょうか? その点を探るべく、Chapter 8「時間って何?」のなかからいくつかのトピックスを引き出してみることにしましょう。

時間の定義

「時間って、いったいなんだろう?」と人に聞いてみたとしたら、次のような答えが返ってくるかもしれません。

「『昔』と『いま』の違いだよ」

「出来事がいつ起こるのかを教えてくれるものさ」

「時計で計るもの」

「時は金なりなんだから呼び止めるな!」

どれも、もっともらしい定義ばかりではあります。けれど考えれば考えるほど、ますます疑問が湧いてくるのではないでしょうか。たとえば、「そもそもどうして『昔』と『いま』があるんだろう?」「『いつ』ってどういう意味なんだ?」「時計も時間に従っているんじゃないの?」「こんなことしてる時間のある人なんているの?」というように。

なにしろ定義すらできないのですから、先に進むのは難しそうにも思えます。しかし、不安になることはないと著者は言うのです。

「時間ってなに?」という疑問は、たしかに漠然としています。でも、「すごく身近なのにうまく定義したり正確に説明したりできなかったこと」は、以前にもたくさんあったはず。

そして、それは他の分野でも同じ。その証拠に生物学者は「生命」の定義を何十年も議論しあっているし、神経科学者は「意識」の定義をめぐって言い争っています。

いずれにしても、時間を定義することが難しいのは、それが人間の経験や考え方にあまりにも深く染み込んでしまっているから。時間は、いまの「いま」と昔の「いま」を結びつけるもの。

いま感じているものはすべて「現在」と呼ばれますが、現在は一瞬でもあります。どの瞬間もすぐに過ぎ去り、現在の鮮明な経験は過去の記憶へ薄れていってしまうということ。

でも、時間には未来も関係してきます。そして現在がとても大事なのは、未来と過去をつないでくれるから。未来のことを考えて過去から推測することは、生きるために欠かせないわけです。つまり、時間の概念がなければ、自分の経験をイメージするのは難しいということ。

物理学で時間のことを考える場合も同じで、それどころか時間は物理学の定義自体に組み込まれているのだといいます。ウィキペディアには、物理学とは「物質と、空間と時間におけるその運動を研究する学問」だと書かれているそうですが、「運動」という言葉でさえ、時間の概念が前提になっています。

物理学の基本的な使命は、過去に基づいて「未来がどうなるか」「未来をどう変えられるか」を理解すること。時間がなかったとしたら、物理学に意味はないといっても過言ではないわけです。(148ページより)

時間は空間とどこが(どうして)違うのだろう?

時間と空間を結びつけて一緒に考えると、似ている点が見えてきて、違いもはっきりしてくるもの。人と時間との関係は、空間とはまったく違うわけです。

まず、空間のなかでは好きなように動き回ることができます。しかも、遅くも速くも、好きなスピードで動くことも可能です。でも時間の場合、そんな自由はありません。

時間に沿って君は一定のペースで(正確に言うと1秒あたり1秒で)着実に動いていく。引き返したり、同じところをぐるぐる回ったりはできない。

時間をさかのぼろうと突然思いついて、以前ある場所にいた時刻に、それと違う場所に行くことなんてできない。違う時刻に空間内の同じ場所にいることはできるけれど、同じ時刻に空間内の違う場所にいることはできないのだ。(159ページより)

それだけではありません。なにかの物体がある決まった場所(空間内のひとつの位置)にとどまっているのは普通のことですが、ひとつの決まった時刻にとどまっていたらとても変。

なぜなら時間は、波のようにどんどん進んでいくから。過ぎ去った時間は、二度と戻ってこないということです。

でも空間内の位置は、好きなように変えることが可能。一生に一度も訪れないような場所もたくさんあれば、何度も訪れる場所もたくさんあるわけです。ところが時間は、生まれた瞬間から死ぬ瞬間まで一方向にしか進んでいかないのです。

理論のなかで時間を「もうひとつの次元」と考えるのは、数学的には都合がいいこと。しかし、時間は特別で、空間とは大きな違いがあることを忘れるべきではないと著者は主張しています。

時間が空間と違うのは、いくつもの場所がつながってできているわけではないから。僕たちは時間を、宇宙の何枚もの静止画を因果関係で結びつけるものだと考えており、そのことが「時間でできること、できないこと」を大きく左右しているというのです。(159ページより)

時間をさかのぼることはできる?

人にできることはたくさんありますが、タイムトラベルとなると話は別。それは、現代物理学でも不可能とされているからです。「時間をさかのぼる」というシナリオを考えると、次から次へとパラドックスが噴出してきて、宇宙の成り立ちに関わる基本的で重大な前提条件が崩れてしまうわけです。

時間をさかのぼると因果律が崩れてしまうかもしれない。宇宙を理屈の通る場所にしておきたいなら、それは一大事だ。(中略)

因果律がなかったら、何ひとつ理屈なんて通らない。たとえば君は、家に着いたら水風船を落とされるのを見越して、用心するようになった。だからフェレットのほうも水風船を落とすのに飽きてしまった。

そこでフェレットはタイムマシンをつくって、君が飼いはじめる前、まだだまされやすかった2005年に戻って、君をずぶ濡れにしようと画策するかもしれない。でももしそれに成功したら、予想もしなかった影響が出るかもしれない。

そのとき君はまだフェレットを飼うかどうか迷っていたけれど、いたずらされたことで腹を決めたとしたら? 飼わないと決めたとしたら、のちのち君をずぶ濡れにして、いたずらに飽きて、タイムマシンをつくることになるフェレットなんていなかったことになるのだ! 

すると2005年に君はずぶ濡れにならずに、フェレットを飼うことになる…。フェレットをめぐる矛盾から永遠に抜け出せないのだ。教訓。タイムトラベルが不可能なのは因果律を破るからだし、フェレットを飼う前にはよく考えたほうがいい。(162ページより)

こう述べたあとで著者は、SFを引き合いに出しています。物語のなかの時空でエイリアンが動き回っていたとします。しかし動き回っているということは、時間がかかっているということ。エイリアンは時空のなかのある場所にいて、そののち、別の場所に行きます。

でも、「その後」とはどういう意味なのでしょう? つまり、そのSFの作者は自分でも気づかないまま、時空宇宙にさらに一方通行の時間の概念を重ね合わせてしまっているわけです。

そんなことからもわかるとおり、たとえ物語のなかだったとしても、時間が空間に似ているような宇宙でつじつまを合わせるのは難しいということです。(161ページより)

たとえばこのように、本書には宇宙についての「決定的な答え」が書かれているわけではありません。そのため著者は「未解決の疑問を紹介する本」だと記しているわけです。

つまり読者は本書を読むことによって、著者と一緒に考えることができるのです。それは、「少しでも答えに近づこうと努力すること」といいかえることもできるでしょう。

ただしその努力は、決して難しかったり苦しかったりするものではありません。むしろ、想像力を働かせる楽しみがそこにはあるといえます。

そんなこともあり、気分転換したいや、リラックスしたいときなどには最適。この週末、ゆっくりとページをめくってみてはいかがでしょうか?

メディアジーン lifehacker
2018年12月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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