地球46億年 気候大変動 横山祐典(ゆうすけ)著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

地球46億年 気候大変動 横山祐典(ゆうすけ)著

[レビュアー] 泊次郎(科学史研究家)

◆生命を保つ「からくり」の限界

[評]泊次郎(科学史研究家)

 地球が誕生して四十六億年。今よりはるかに温暖な時代があったかと思うと、赤道まで氷で覆われていた時代もあった。それでも生命が何とか生き延びてこられたのは、気候の変動を一定の振幅に収める「からくり」が地球に備わっていたからである。研究に魅せられた数々の科学者のエピソードをまじえながら、変動の歴史とその「からくり」を紹介したのが本書である。

 「からくり」は、太陽熱、プレート運動、生物など多くの要素から成り立っている。主役は、二酸化炭素などの温室効果ガスである。大気中の二酸化炭素は、地表から放出される熱を吸収し、地表に送り返す性質を持っている。それゆえ、二酸化炭素濃度が高くなるほど気温は上がり、低くなると気温は下がる。

 地球が誕生したころ、太陽は今より三割ほど暗かった。地球は凍結しても不思議ではなかったが、二酸化炭素などの濃度が四十倍以上も高かったので、凍結しない海があった。そこから生命が誕生したと考えられている。

 二酸化炭素は、岩石が風化作用を受けることで固体化し沈積して大気から取り除かれる。一方で火山活動を通じて地中から供給される。この大気と地中との間の炭素のキャッチボールによって、気候はほぼ一定に保たれてきた。

 例えば、今から一億年前の白亜紀の地球の平均気温は、今より十度前後高かった。活発な火山活動などで、二酸化炭素濃度が今より二~六倍も高かったのが原因だという。ところが、五千万年前頃から地球は冷え始める。プレート同士の衝突が起こり、高い山脈が形成されるなどしたため、風化作用が活発になり、二酸化炭素濃度が下がったためだと考えられている。

 今、この「からくり」に変調の兆しが現れている。産業革命以降、二酸化炭素濃度は一・四倍に増え、平均気温は上がり続けている。気候をマイルドに保つ働きをしてきた深層海流に異常が見られるという報告もある。人間は自然の「からくり」を破壊しつつあるのではないか。気候変動の歴史はそう教えてくれる。
 (講談社ブルーバックス・1296円)

 東京大大気海洋研究所教授。海洋研究開発機構招聘(しょうへい)上席研究員などを兼任。

◆もう1冊 

 中川毅(たけし)著『人類と気候の10万年史』(講談社ブルーバックス)

中日新聞 東京新聞
2018年12月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク