ビジネスパーソンは知っておきたい、英語の「上品」で「繊細」な表現

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ビジネスパーソンは知っておきたい、英語の「上品」で「繊細」な表現

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ビジネスパーソンが知っておきたい エグゼクティブの英語』(清水晶彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、デルタ航空で客室乗務員を勤めている人物。大学卒業後、外資系銀行・証券会社、外資系航空会社の機内サービス勤務を経て、いまから21年前の1997年11月に客室乗務員になったというベテランです。

おもに機内で、世界を股にかけて活躍する多くのエグゼクティブと接してきたそうですが、そんななか、日常的に残念に感じていたことがあったのだといいます。それは、日本人のエグゼクティブの英語には不躾なものが多いということ。

以前、アメリカに向かう飛行機の中でこんなことがありました。明け方にアメリカに到着する便だったのですが、夜が明けてきたころ、窓際に座っている欧米人の方が、窓のシェイドを開けて、外の様子を見ています。

その後ろの通路側の席には日本人のビジネスマンの方が座っていたのですが、外からの光がまぶしかったのでしょう、その欧米人の方に、こう言ったのです。

“Please shut the window shade!”

その欧米人の方は、少し驚いた様子で、そのあとムッとした表情に変わりました。 なぜ、彼はムッとしたのでしょうか。それは、見ず知らずの人に「シェイドを閉めなさい!」と言われたからです。

そうなのです。“Please shut the window!”は、「シェイドを閉めていただけませんか?」ではなく、「閉めなさい!」という命令のニュアンスになってしまうのです。 残念ながら、日本では、「命令文に“Please”をつけると、丁寧なお願いの文章になる」と教えられていますが、実際はそうではありません。

こういうときは、“Excuse me, sir.”、あるいは“Could you do me favor?”(ちょっとよろしいですか?)と呼びかけたうえで、“Would you mind shutting the window shade?”(シェイドを閉めていただいてもよろしいですか?)という言い方をすれば、快くシェイドを閉めてくれたでしょう。(「はじめに」より)

日常的にこのような場面を目にするたび、日常的にコミュニケーションをとるうえではもちろん、外国人とビジネスをするうえでも非常にもったいないことだと感じていたのだといいます。

そこで、日本のビジネスパーソンに、自身がこれまで外国人とコミュニケーションをとりながら学んできた、ていねいで品格のある「エグゼクティブの英語」を紹介したいと考え、本書を書いたというのです。

きょうはPart 1「コミュニケーションの基本」のなかから、Scene 4「言いにくいことを伝える」をご紹介したいと思います。

相手の間違いを指摘するときには、攻撃的にならないように、主語にyouなど人を指す名刺を極力使わないようにすることがポイント。“There is /are…”などを用いて、責任の所在を明らかにせず、不特定な形で示すことが大切なのだそうです。

そうすれば問題の矛先を特定の人に向けることなく、客観的で穏便に状況だけを伝えられるというわけです。

Q.このようなとき、なんと言いますか?

上司が作った資料を見ていて、取引先の業績を誤って記載しているのを発見しました。 そこで上司に、「この数字が間違っています」と伝えたいと思います。

あなたなら何と言いますか? (67ページより)

エコノミークラスな表現

You’ve done this wrong.

「これ、間違ってるよ」

著者によれば、これは完全に上から目線。職場で先輩や上司に対して使う表現ではないそうです。

ビジネスクラスの表現

You’ve made a small mistake with these numbers.

「ここの数字、ちょっと間違えていますよ」

これは、部下や同僚には使えるソフトな言い方。Smallは「ちょっと」という意味なので、これをつけ加えることで謙虚な姿勢が伝えるといいます。

[参考]

Would you mind checking these figures again, please?

「この数字をもう一度確認してもらえませんか?」

ていねいにお願いする際の言い方だそうです。

ファーストクラスな表現

Sorry, sir, but these seems to be a small miscalculation here.

「申し訳ありませんが、ここの計算が少し間違っているようです」

顧客や先輩のミスに対して“seems to be…”「のようです」や「…と思われます」を加えることで、断定的な言い方を避け、柔らかく伝えることが可能に。

目上の人はお客様に対し、控えめに指摘するときに使うといいそうです。 (以上、66~69ページより)

さらに役立つ表現

I’m sorry. I might be out of line but …

「すみません、失礼かもしれませんが…」

伝えにくいことを相手に話すときのクッション言葉。心の準備をしてもらうための前置きとして使うそうです。

I’m sorry. I might be out of line but you seem to be worried about nothing.

「すみません、失礼かもしれませんが、無用なご心配をなさっているように見受けられます」

I might be wrong, but … It could be wrong, but …

「私の勘違いかもしれませんが…」

助動詞の過去形であるmightやcouldを使って、「もしかして…かもしれない」という意味を表す推量表現。自分の意見が絶対でないことを伝える際に使うのだとか。

I might be wrong, but I seem to remember booking the room at 10 a.m., not 11 a.am.

「私の勘違いかもしれませんが、午前11時ではなくて10時にその部屋を予約したと記憶しているのですが」

It could be wrong, but didn’t I give you your umbrella back?

「私の勘違いかもしれませんが、あなたに傘をお返ししませんでしたか?」

Maybe I’m wrong, but I’m under the impression that they are not very interested in the book I wrote.

「私の勘違いかもしれませんが、彼らは私が書いた本にあまり興味を持っていないという印象があるのですが」 (以上、70~71ページより)

助動詞の過去形を使わないぶん、カジュアル感が出る表現。

ビジネスシーンですぐに使えるフレーズがシチュエーションや目的別に紹介されているため、とても実用的な内容。

ビジネスで英語を使う必要のある方には必携です。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年12月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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