『推薦文、作家による作家の』 中村邦生編

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推薦文、作家による作家の

『推薦文、作家による作家の』

著者
中村邦生 [編集]
出版社
風涛社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784892194528
発売日
2018/10/19
価格
2,484円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『推薦文、作家による作家の』 中村邦生編

[レビュアー] 尾崎真理子(読売新聞本社編集委員)

 文学全集の内容見本(宣伝用パンフレット)は名文の宝庫である――言われてみればその通りだ。ひとかどの作家が、敬愛する作家のために、ひと肌脱いで宣伝文を書く。面白くならないわけがない。

 84人の作家が作家に捧(ささ)げた108編がずらりと並ぶ。どの推薦文なら全集を買おうと心が動くか。その観点で読んでいくと、井上ひさしによる『藤沢周平全集』23巻などは即、古書を検索したくなる威力を秘める。藤沢の日本語は〈烈(はげ)しくはないがしなやかで、派手ではないが正確で、雄弁ではないが勁(つよ)い〉。

 谷川俊太郎の推す『草野心平全集』12巻も強烈だ。〈何事かと思う。/言語というよりもひとかたまりの巨(おお)きな森のざわめきである〉〈文字というよりヒトの咆哮(ほうこう)である。/全集というよりひとつの生涯である〉。これはもはや詩である。

 井伏鱒二による『永井龍男全集』12巻、『井伏鱒二全集』28巻を推す安岡章太郎の文章なども、編者が補記するとおり、随筆風の滋味が後を引く。あまりに豪勢な名文ぞろいで、推薦文だけ読んで終わるのが、少々後ろめたくもなってくる。(風濤社、2300円)

読売新聞
2018年12月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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