『書物のある風景』 ディヴィッド・トリッグ著

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書物のある風景

『書物のある風景』

著者
ディヴィッド・トリッグ [著]/赤尾秀子 [訳]
出版社
創元社
ISBN
9784422701165
発売日
2018/10/29
価格
4,536円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『書物のある風景』 ディヴィッド・トリッグ著

[レビュアー] 宮下志朗(仏文学者・放送大特任教授)

 新聞はスマートフォンで読むことのある私も、本はやはり紙でないとダメだ。本書は、古今東西の様々な「書物のある風景」を綺麗(きれい)な印刷で収めている。「蝋板(ろうばん)と尖筆(せんぴつ)を持つポンペイの女」から、「書斎の聖ヒエロニムス」や「受胎告知」の聖母マリア、静物画を経て、近現代の読書する子供等、写真・インスタレーションも含めて三〇〇点以上を楽しめる(国芳、歌麿なども)。

 一九三三年五月、ベルリンで「退廃的」「非ドイツ的」な書物が焚書(ふんしょ)となった。現在、この広場にウルマン作「図書館」という空っぽのモニュメントがある。銘板には「それは序曲にすぎない。本を焼く者は、いずれ人間も焼くようになる」という言葉が。ハイネが一八二三年に戯曲で書いたというが、まさに予言だ。

 アルチンボルドの「司書」は、書物収集家を揶揄(やゆ)しているという。頭上の本だけが開かれているが、それを読むことはできない。赤尾秀子訳。(創元社、4200円)

読売新聞
2018年12月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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