「少女が消える物語」3冊 カルト的人気映画の原作も

レビュー

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  • ピクニック・アット・ハンギングロック
  • ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹
  • クリスマスに少女は還る

書籍情報:版元ドットコム

カルト的人気の映画の原作、消えた少女たちのミステリー

[レビュアー] 瀧井朝世(ライター)

 一九七五年にオーストラリアで製作され、カルト的な人気で今なお語り継がれるピーター・ウィアー監督の映画『ピクニック・アット・ハンギングロック』。ジョーン・リンジーによる原作小説の本邦初訳がこのたび刊行となった(井上里訳)。

 一九〇〇年二月十四日。自然に囲まれた寄宿女学校の生徒たちはハンギングロックと呼ばれる岩山のふもとへピクニックに出かけるが、教師一名と少女四名が行方不明に。大がかりな捜索が行われたものの手がかりはなく、後日見つかった一名は当日の記憶をなくしていた。この奇怪な事件以降、学院周辺は不穏な空気に包まれていく。

 映画は乾いた光の中で少女たちの白いワンピースが揺れる映像と不気味な内容とが絶妙に融合していたが、それもこの原作小説の美しい文章世界あってこそだったのだと得心。動植物、少女の脆さ、大人たちの戸惑いや苛立ちが繊細に、時に生々しく描かれている。今まで翻訳が出なかったのが不思議に思える傑作だ。

 少女たちが消える物語といえば、ジェフリー・ユージェニデス『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』(佐々田雅子訳、ハヤカワepi文庫)も。こちらは『ヴァージン・スーサイズ』のタイトルでソフィア・コッポラ監督が映画化して話題になった。ミシガン州の田舎の町である初夏の日、美しい五人姉妹の末っ子、十三歳のセシリアが両手首を切って自殺未遂。それを皮切りに姉妹は一人ずつ異なる方法で命を絶っていく。彼女らの友人だった少年が大人になって出来事を振り返る形で物語は進む。家族の問題や思春期の不安定さの向こうに当時の社会が見えてくる、ほの暗く切ない特異な青春小説である。

 キャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』(務台夏子訳、創元推理文庫)ではクリスマス前の町から十歳の少女二人が失踪。若手刑事ルージュの脳裏には、十五年前に双子の妹が同じく十歳で誘拐され殺された悪夢がよみがえる。一方、監禁された少女たちは懸命に脱出を試みていて……。事実の様相が覆る結末が話題となったミステリーだ。

新潮社 週刊新潮
2018年12月27日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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