『音叉』 エドワード・ゴーリー著

レビュー

4
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音叉

『音叉』

著者
エドワード・ゴーリー [著]/柴田 元幸 [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784309279787
発売日
2018/10/17
価格
1,296円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『音叉』 エドワード・ゴーリー著

[レビュアー] 村田沙耶香(作家)

 エドワード・ゴーリーは、私にとって、幸福な不安をくれる絵本作家だ。彼の絵本を手に取ったことがある人なら、その緻密(ちみつ)で不思議な絵に魅了され、淡々と語られる恐ろしい出来事になぜか安らぎを感じ、この絵本は自分のために存在するのだと思い込み、と彼の作り出した世界を熱狂的に愛する気持ちを理解してもらえると思う。

 この『音叉(おんさ)』の主人公は、シオーダという少女である。家族から嫌われ、世をはかなんで海に飛び込んだシオーダは、不思議な生き物と出会う。これが、絵を見ても説明することができない本当に奇妙な生き物なのだ。私が一番惹(ひ)かれるのはその目だ。真っ黒な海と対照的に、その生き物の目は白く澄んでいて、じっとシオーダを見つめている。

 この不思議な生き物により、シオーダの物語は残酷で幸福な展開を迎える。翻訳者の柴田元幸氏があとがきで「異色作家の異色作品」と言っているように、ゴーリーとしては意外な結末かもしれない。それもすべてこの奇妙な生き物が運んでいった未来だと思うと、奇妙に腑(ふ)に落ちる、魅力的な本なのである。

 河出書房新社、1200円

読売新聞
2019年1月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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