『学校の「当たり前」をやめた。 : 生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革』
- 著者
- 工藤, 勇一, 1960-
- 出版社
- 時事通信社
- ISBN
- 9784788715943
- 価格
- 1,980円(税込)
書籍情報:openBD
<東北の本棚>対話を重ねて大胆改革
[レビュアー] 河北新報
中間・期末テストや宿題、頭髪・服装指導、学級担任制を廃止した中学校がある。私立ではなく公立校の話だ。東京都千代田区立麹町中は、かつて卒業生の多くが都立日比谷高や東京大に進んだ名門。2014年に校長として着任した著者が学校改革に取り組む道程を記した。
改革の前提にあるのは、子どもたちが社会の中でよりよく生きていくための「自律する力」を育てるという思いだ。そのためには100年続いた仕組みも、最適な手段でなければ変える柔軟性を持つべきだと訴える。
例えば中間・期末テスト。著者は一夜漬けで勉強する悪癖が付き、大人になっても「やっつけ仕事」をしてしまうと指摘する。麹町中では定期考査をやめ、単元が終わるごとに再チャレンジが可能な小テストを始めた。全員満点なら5段階評価の「5」がみんなに与えられる。子どもたちも主体的に学ぶようになった。
クラスごとの「勝ち組」「負け組」の意識が生まれやすい学級担任制をやめ、学年ごとに全員担任制を導入した。子どもたちは他のクラスを意識することが減り、情報共有のため教員間のコミュニケ-ションも密になった。
学校改革を進める上で重視したのは「対話」だという。大胆な内容に周囲の反対がなかったわけではない。意見の相違を前提に対話を重ね、合意形成を目指した。信念の下に学校の「当たり前」を疑い、行動する著者の言葉の一つ一つに重みがある。
著者は1960年鶴岡市生まれ。山形県や東京都の教員、教育委員会を経て現職。
時事通信社03(5565)2155=1944円。