【自著を語る】明日に向かって――鈴木るりか『14歳、明日の時間割』

レビュー

5
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14歳、明日の時間割

『14歳、明日の時間割』

著者
鈴木 るりか [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784093865241
発売日
2018/10/17
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

明日に向かって

[レビュアー] 鈴木るりか

鈴木るりか
鈴木るりか

 学生の本分は勉強。確かにそうだと思う。異論はない。

 けれど大人たちは言う。

「学校の勉強なんて社会に出たら何の役にも立たない」

 その一方で、こうも言う。

「学校の勉強って、大人になっても、生活の中でふとした時に顔を出すことがあって、あの時勉強しておいてよかったとか、もっと勉強しておけばよかった、とつくづく思う」

 どちらも真実なのだろう。

 果たしてその真っ只中にいる学生の私たちは……。

 勉強なんて、やっぱり好きじゃないし、できればやりたくない。でも学校の勉強がなくなったら、それはそれで困惑するだろう。学生である以上、やはり教科の勉強は切り離せない。好き嫌い、成績のいい悪いにかかわらず。

 そんな学校の教科をテーマにした小説を書きたいと思っていた頃、スポーツ庁がこのような目標を打ち出したというニュースを耳にした。

「運動嫌いの中学生を半減させる」

 半減、という言葉が強烈で、運動の苦手な子がこれを聞いたらどう感じるだろう、と思った。かくいう私も運動はどちらかといえば不得手なので、まず一行書き出してみると、スムーズに筆が進んだ。そこへ主人公の祖父の死を絡め、今は遙か遠くにある老いや死に思いを馳せ、思春期の中学生が感じる死生観を描いた。

 運動が大の苦手な主人公とは対照的に、スポーツ万能な中原くんは、当初この章にしか出てこない設定だったが、なかなか魅力的なキャラクターだったので、キーマンとして全編通じて登場させ、より輝く存在になった。

 それぞれの章の主人公たちに、ささやかな光や癒やしや救いを与える中原くん。

 花瓶には花を、人生には中原くんを! 中原くんのような存在を心から欲しているのは、私自身かもしれない。

 また、この小説は、枚数に比較して、登場人物が多い。ほんの数行しか出てこない人も含めるとかなりの数だ。人は生きている限り、人と関わらずに生きていくことはできない。その中で、気づき、成長していく。各章の主人公たちも、人と触れ合い、感じ、考える中で、僅かではあっても皆、前進している。

 動かしているのはやはり希望だ。明日につながる希望。未来を照らす光。デビュー作『さよなら、田中さん』もそうだったが、この二作目もそんなものが感じられる小説になってくれていたら嬉しい。

 最後に、「国語」の章では、中学生で文学賞を受賞した女の子が主人公なので、これは私小説なのでは、と思われる方が多いと思う。三分の一ぐらいは、そうと言える。なかでも、主人公の明日香が、作家になる覚悟も曖昧なうちに、よく知らない世界に気が付いたら飛びこんでいて、戸惑いを隠せない心情を吐露する場面は、偽らざる今の私の気持ちと言っていい。だが、前作で、読者の方からいただいたいくつかの感想の中に「好きな作家のひとりになりました」「これからも追い続けたい作家さんです」とあり、改めて自分は「作家」になったのだと感じた。読者に作家にしてもらったのだ。

 これからも私を「作家」にしてくれた読者に応えられるような小説を書きたいと思う。

 中学生が主人公の章がメインですが、是非大人の方にこそ読んでいただきたいです。

小学館 本の窓
2019年1月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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