ゆにばーす・はらが明かす「詐欺メイク」&「M-1」の舞台裏
[文] ラリー遠田(お笑い評論家)
相方・川瀬名人への想い
――川瀬さんは「『M-1』で優勝したら芸人を辞める」と言っていますが、それに関してはらさんはどう思っているんですか?
はら:でも、飲み込みましたね。飲み込むしかない、というか。その後は特に考えずにやっています。
――川瀬さんは『M-1』だけに懸けているから、ほかのバラエティ番組に出るのも否定的ですよね。以前、本人には内緒で『ゴッドタン』(テレビ東京系)に引っ張り出されて、その後は出演オファーを拒否していたそうですね。
はら:そうですね、川瀬が出ることはもうないと思います。(『ゴッドタン』プロデューサーの)佐久間(宣行)さんが楽屋に来てお願いしてましたけど、断ってました。「いや、すいません、もう出ません」って。
――最初に出たときに騙し討ちみたいな感じで無理矢理引っ張り出されていて、そのことも本人は納得がいってなかったんでしょうか。
はら:そうなんですよ、それですごい怒ってましたね。
――相方としてそういうのはどう思いますか?
はら:各々の意見なんで、別にいいかな、と。それぞれ思うことはあると思うので。宗派が違うと思っています。
――はらさんは、全部飲み込むんですね。
はら:とりあえずいったん飲み込まないと、っていう感じですね。飲み込んでから自分で考えるようにしてます。ファンの人には「悟りを開いたんじゃないですか」ってよく言われます。
――では、川瀬さんのいいところはどこですか?
はら:何でもちゃんとアドバイスをしてくれますね。「どうしたらいいですか」っていうことに対して、わかんないことはわかんないって言うし、はっきり意見をくれるのがいいところかもしれないです。家電製品を買うときにも「あれはダメだ」とか。
――お笑いのことだけじゃなくて、そういうことも?(笑)
はら:お笑いのことだけじゃないです。大阪から東京に出てきた芸人に対しても「どこに住んだらいいか」っていうのをアドバイスしたりしています。
――何にでも自分の意見を持っている人なんですね。
はら:持ってますね。しかも、やっぱりお笑いが好きだから、芸人に対してはウケてもウケなくても愛情で接してるんですよ。だから嫌われてないっていうところはあると思います。後輩にも優しいですし、ダメ出しを求められたら言いますし。あと、隠さないですね。自分に都合のいいことだけ言わないで、悪いこともちゃんと言いますし、自分を棚に上げないですね。
――でも、コンビを組み始めた頃は、大変だったんじゃないですか?
はら:もう大変でしたね。お互いが相手をわかってないから、使おうとしか思ってなかった感じですね。結構当たりもきつかったです。コーチング理論の本を読んでから川瀬はちょっと変わり始めました。「はらさんがパワプロのマークみたいに汗をかいているときは、無理にやらない」とか、顔の感じを見て決めているらしいです。
――川瀬さんがはらさんに指導する、みたいな感じなんですね。どういうことを言われるんですか?
はら:ネタですね。ネタ以外はあんまり言われないです。本当にネタには厳しいですね。アドリブ入れようとしたら「お前はそこから先のことを考えてないだろう」って言われて、ちょっとバチバチにはなります。熱いですね。ネタはネタとしてちゃんと見せたい人なんです。
――ネタの練習をするときにも壁に向かってやるんじゃなくて、楽屋でくつろいでいる芸人に向かってやったりするそうですね。
はら:よく知ってくれてますね! それは本当なんです。私は嫌だから壁を向くんですけど、川瀬だけは人に向かってやってます(笑)。誰か近くを通ったら、通っている人を目で追いながらやるんですよ。なぜそうするのかというと「人前で緊張しないため」って言ってましたね。『M-1』の本番前に時間があるときにも、非常階段で(霜降り明星の)せいやに向かってネタを見せたいって言われて、私は嫌だから断ったんですよ。そしたら、「1人でやる」って言い出して、せいやに向かって私のセリフも全部やり始めて(笑)。
――「1人ゆにばーす」を(笑)。
はら:それをやってたのがおかしくて。そこまでしてやってましたね。
――コンビとしてはもう来年の『M-1』に向けて動き出しているという感じですか?
はら:はい、単独ライブも隔月でやるようになるらしいんで。先輩には「追い詰められんなよ」って言われました。でも、やっていることは間違ってないし、結果的にはいい方向につながってるからいいのかな、と思いますね。……私、やっぱり洗脳されてるんでしょうか?(笑)