『雑誌に育てられた少年』 亀和田武著

レビュー

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雑誌に育てられた少年

『雑誌に育てられた少年』

著者
亀和田武 [著]
出版社
左右社
ISBN
9784865282139
発売日
2018/11/30
価格
2,970円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『雑誌に育てられた少年』 亀和田武著

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 亀和田武は、いつだって編集長だ。劇画アリスからテレビのワイドショーまで「基本は全部ポップカルチャー」だと受け入れる。それゆえ、彼の半世紀にわたるコラムを集めた本書は、裏表紙の注記がなければ雑誌と見まがう。

 「エロ雑誌の編集者」でありながら、いや、だからこそ歌舞伎からロレンス・ダレルまで森羅万象、ありとあらゆるジャンルに貴賤(きせん)なしと書き散らす。その姿勢をヴァラエティ・ブックが体現する。

 それは、雑誌カバーから小説まで雑多な文章をさまざまなレイアウトで並べた雑誌のような本。四百頁(ページ)近い言葉は気合と品性から生まれる。

 前回の東京五輪の前後、亀和田は中高生だった。華やかな高度成長のイメージがある当時だが、彼は「屈折をこじらせていくだけの寂寞(せきばく)とした時期」を過ごした。

 しかし同時期、伝説のSF同好誌に掲載された彼の書評には、若書きの魅力がある。

 SFという宇宙にはじまり「猥褻(わいせつ)屋」として、地べたで「孤独な闘い」を続けるポップカルチャーのクールな情熱に何度でもヤケドしたい。

 以上です、編集長!(左右社、2750円)

読売新聞
2019年1月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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