「本音」を読み違えると、売り手の努力も逆効果に。男女の購買心理がわかる一冊。

レビュー

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「本音」を読み違えると、売り手の努力も逆効果に。男女の購買心理がわかる一冊。

[レビュアー] 澤田真一(ノンフィクション作家)

 いやはや、己の至らなさを思い知らされる本を読んでしまった。
 世間には「ノンフィクション作家」と名乗っている筆者だが、やっていることはWeb媒体で様々な最先端製品をレビューしたり、企業を訪問してその取材記事を配信するという仕事である。
 記事を書いている最中、自分がもし男ではなく女だったらこの記事の内容も変わってくるだろうなと思うことがしばしばある。
 今回、『ネットで「女性」に売る2 「欲しい」を「即買い!」につなげるホームページの基本原則』(こぼりあきこ・エムディエヌコーポレーション刊)という本を読む機会があった。これはタイトルから想像できる通り、いかにして女性客に「商品を売るか」「商品の魅力を伝えるか」ということを解説した内容である。
 同時に「女性の深層心理や購買心理を理解する指南書」という意味合いも持っている。

 女性は、自分の人生をステキに演出するためにモノを買っています。例えば装飾品のようなものを買う行為だけでなく、充実した時間を過ごすことも、人生をステキに演出するための一部です(本書13ページより引用)

 女性は、解決策を提示されるよりも先に、今の自分の気持ちに「共感」してくれることを望んでいます。(中略)女性に悩みを相談されたとき、親身になって解決策を提案しても感謝されるどころか表情がどんどん曇っていく……男性の方なら、そんな経験がありませんか?(本書21ページより引用)

 男性と女性のすれ違いは、まさに上記の瞬間から始まる。それは筆者も経験済みだ。だからこそ、胸が痛い。
 男性にしてみれば、「こちらは親身になって解決案を提示しているのに、『でもでも』『だって』と悩んでいるだけで、どうして何も行動しないんだろう?」ということになる。解決すべき課題があるなら、それに向けた対策を練って行動するべきだ。男性はそう考える。言うならば「外へ向けたアクション」である。
 しかし、女性は違うのだ。解決策よりもまず、自分が苦悩していることに対する「共感」を求めている。「内へ向けたヒーリング」と表現するべきか。いずれにせよ、スタート地点が違うのだ。
 そのような男女の差異が、一目で理解できる画像がある。

左:男性向け商品ページ、右:女性向け商品ページ
左:男性向け商品ページ、右:女性向け商品ページ

 男性向け商品のページは「優越感」を煽っているのに対し、女性向け商品のそれは「共感」や「一体感」を最優先にしている。
 これがもし、逆だったらどうだろうか? すなわち、女性に向けて優越感と競争心を刺激させるPRを行った場合である。

「怖いもの見たさ」のような効果を狙って、ちょっと過激で目に留まりやすい画像を使いたくなる気持ちはわかりますが、特に女性のお客様にとって調和や平和を脅かすようなイメージは、男性が思っている以上に嫌悪感につながってしまうのです。(本書75ページより引用)

 商品やサービスを提供している側からすれば、「自分たちがこんなに頑張っているのに、どうして売れないんだ?」ということになる。だがこれこそが、先述の「『でもでも』『だって』と悩んでいるだけで、どうして何も行動しないんだろう?」から始まる男女のすれ違いなのだ。
 そのすれ違いを補正する唯一の手段は、売り手側(男性と言い換えてもいい)がスタート地点を見直すことである。

 男性は常に超高倍率の望遠鏡で遥か地平線を見つめるような行動を取るが、女性はそれよりも遥かに小型のオペラグラスで全体の色調や雰囲気を読み取る。もしその光景の中に異様な雰囲気の物体があったら、瞬時にそれを察してしまう。

 多くのお客様はプロのデザイナーではありませんから、ホームページのデザインテイストに統一感があるか、いちいちチェックしたりはしません。けれども、テイストの「違和感」には敏感に反応するものです。特に現代の女性はテイストの統一感には敏感です。(91ページより引用)

 本書はタイトルこそ『ネットで「女性」に売る』とあるが、これは紛れもなく「女性の気持ちを理解するノウハウ」を書いた本でもある。下手なコミュニケーション本よりも、遥かに実践的で現実に沿った知識が詰め込まれている。女性客にモノを売る立場の人はもちろんだが、筆者は奥様やパートナーとの関係に苦悩する青年諸兄にも、本書をぜひお勧めしたい。

エムディエヌコーポレーション
2019年1月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

エムディエヌコーポレーション

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