<東北の本棚>地域に根差す作品紹介
[レビュアー] 河北新報
長引く出版不況の中、小規模ながらも地域に根差して良質な書籍を出し続けている全国の出版社55社と、そこの代表作などを丹念に紹介したムック本だ。東北では荒蝦夷(仙台市)と無明舎出版(秋田市)、歴史春秋社(会津若松市)を取り上げている。
荒蝦夷については「とことん東北にこだわり続け歴史や人物、文学を掘り起こしている」と位置付けている。東日本大震災の被災地の出版社として、被災地からの視点で本を作っていく覚悟などを伝えている。
震災にまつわる怪談集「渚にて あの日からの<みちのく怪談>」や「震災と文学 講義録」などを注目本として挙げている。
無明舎出版に関しては「奇をてらわず真正面からテーマに向き合ってる」と紹介。「『学力日本一』の村 秋田・東成瀬村の一年」や「最後の狩人たち 阿仁マタギと羽後鷹匠」などを推薦している。
会津の歴史や風土、人物などを伝えている歴史春秋社は1972年の創業以来、約2000冊を出版。喜多方の信仰や伝統工芸などに焦点を当てた「喜多方 人々の心に響くまち」を一押ししている。
巻頭の座談会には荒蝦夷の土方正志代表も参加。震災後の仙台市の出版事情や小規模な出版社ならではの魅力などに言及している。
三栄書房03(6897)4611=1000円。