きものを着たい初心者“必読” 最低限の基本から教える入門書

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お茶の先生に教わる きちんときもの手ほどき帖

『お茶の先生に教わる きちんときもの手ほどき帖』

著者
北見雅子 [著]
出版社
淡交社
ISBN
9784473021281
発売日
2018/11/09
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

きものを着たい初心者“必読” 最低限の基本から教える入門書

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 文楽に通い始めてから10年以上が経つ。最初は人形の動きに魅了され、やがて浄瑠璃の語りに嵌った。東京、大阪の定期公演に毎回足を運ぶばかりかイベントも必ずチェックする。まさに病膏肓(やまいこうこう)に入(い)る、である。

 劇場に通ううち、きものを着ている人たちが気になるようになった。歌舞伎とともに観客のきもの率は高い。やがて自分も着たくなる。最初はインターネットを検索して見よう見まねでどうにか着たが、外に出ていく勇気はなかった。

 潜在的にきものを着たいと思う人は増えているような気がする。夏に浴衣を着ることが当たり前になり、そこから興味を持った人もいるだろう。着付け教室に通うのはハードルが高いと思うなら、まずはわかりやすい入門書を勧めたい。

 本書はきもののプロ中のプロが案内役。著者は丹後ちりめんの産地生まれで生家は織物屋という生え抜きだ。しかし若いころはきものを着せられることを少し面倒だと感じていたらしい。

 著者がきものを好きになったのは茶道の専門学校に入学し、毎日かならず着るようになってからだという。

 私も経験上感じるのだが、きものは着れば着るほど好きになる。確かに最初は面倒だ。布を体に巻き付けるだけなのは不安だし、帯を巻くのも大変だ。トイレの後の着崩れは怖い。人に着付けてもらい、苦しくて気持ちが悪くなった人もいるだろう。

 その上決まり事がいろいろありそうだ。季節や場所柄などTPOにうるさいイメージがある。

 本書は、その最低限の基本から教えてくれる。初心者が何より迷う着付けの基本を、着る前の準備としてきものや紐の置き方から教えてくれる本はそうないだろう。

 おしゃれの選択肢のひとつとして、日本のきものは魅力的だ。伝統は意外と身近にあり、教わることも簡単なのだ。2019年、ひとつチャレンジしてみてはいかがだろうか。

新潮社 週刊新潮
2019年1月31日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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