居心地良い場所へ 『思わぬ出会いに心ときめく パリの小さな美術館』

レビュー

2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

思わぬ出会いに心ときめく パリの小さな美術館

『思わぬ出会いに心ときめく パリの小さな美術館』

著者
原田 マハ [著]/川内 倫子 [著]/都築 響一 [著]/鹿島 茂 [著]/隈 研吾 [著]/芸術新潮編集部 [編集]
出版社
新潮社
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784106022869
発売日
2019/01/31
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

居心地良い場所へ

[レビュアー] とんぼの本編集室

 ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し。こう朔太郎がしたためた時代ははるか昔。今はほぼ半日でパリまでひとっとび。あの展覧会を観にちょっとグラン・パレへ、なんていうのもけっして不可能ではなく、フランスは近くなりました。そして何度でも行きたくなるのがパリという街。旅するたびに、自分だけのパリの楽しみ方を発見しては、次の機会を心待ちにしている「パリ通」たちも多いでしょう。

 その「発見」のためのヒントになれば、と願ってお届けするのが本書。最初のパリでルーヴルやオルセーにも行きました、二度目以降の訪問では、一味違うパリを覗いてみたい、というひとに提案したい美術館を集めたものです。

 パリには小さなところもあわせると、全部で150ものミュゼが存在するとか。画家の邸宅やアトリエを公開している個人美術館や、個性的なコレクションを楽しめる博物館、郊外の古城美術館など、あまり知られていないけれど、住人たちが気軽に訪れるような「普段着」のミュゼが、パリにはたくさんあります。

 美術品はもちろんだけど、空間や景観など、展示以外の楽しみがあるのもいいところ。団体客や観光客が来ない、併設のカフェがいい感じ、ミュージアムグッズが素敵、眺めに感動、インスタ映えする、などなど、思わぬ発見が期待できます。

 実際に取材した芸術新潮編集部のIさんに、なかでも「とっておき」を紹介してもらいました。

 まずは伝説のリトグラフ工房「イデム・パリ」。ピカソやシャガールが使った石版が今も使われていて、デヴィッド・リンチもよくここで作業しているのだとか。印刷工さんたちの仕事を眺めているだけで時間が過ぎていきます。出来上がったものだけじゃなくて、製作過程が見られるのが何より魅力なのだそうです。

 次は、パリを訪れたら必ず行くという「建築文化財博物館」。フランス中の歴史的建造物のレプリカ(とはいえレプリカ自体が百年以上前の製作物)を鑑賞しているうちに、フランスを一周した気分になれるそう。窓からセーヌ河越しに見えるエッフェル塔が美しく、カフェはカジュアルでヘルシー。どっしりした外食続きの胃袋にありがたい存在だそうで、憶えておくと良いですね!

 それから「チェルヌスキ美術館」。昨年は俵屋宗達の「風神雷神」がこの美術館にやって来ました。強烈な個性をもった東洋美術通のチェルヌスキさんが集めたコレクションは、ギメ東洋美術館より粒ぞろいであると秘かに言われているそうです。来日したこともあるチェルヌスキさん、もっと日本人にも知られてほしいですね。隣接するモンソー公園も静かで、ほのかにブルジョワジーな香りのする素敵な場所です。

 以上、ぜひ参考にして、居心地の良い場所を探していただければ嬉しいです。美術館データは最新バージョンを掲載したつもりですが、変わることがたびたびあります。ぜひ事前にHPなどをチェックしてから訪問してください。

新潮社 波
2019年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加