24時間が徒労のアナタへ 低生産なニッポンのカイシャ

レビュー

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なぜ日本の会社は生産性が低いのか?

『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』

著者
熊野, 英生, 1967-
出版社
文藝春秋
ISBN
9784166612024
価格
968円(税込)

書籍情報:openBD

24時間が徒労のアナタへの処方箋

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』という疑問にはワタシ、個人的に答えが出てまして、それは「ニッポンのカイシャだから」。現実軽視に原理無視、負け戦を精神論で乗り切ろうとして大負けする無責任な国の無責任な組織だもの、生産性以外もあれこれ低いし、いろいろ悪くて当然。

 それなのにこの新書を紹介するのには理由が2つあって、ひとつは低生産性の現状の認識と原因の分析、そして改善の方法がきっちり書かれてるから。

 本来は国なり組織なりの課題である「働かせ方改革」を「働き方改革」なんて個人の課題にすり替えるペテンを、政治じゃなく経済のプロが指弾してくれるのは痛快だし、生産性だ働き方だという狭くて細かそうな話が実はニッポンを左右する鍵であることが痛感できるのも、ありがたい。

 お薦めしたい理由その2は、指南されてる組織や個人の対応策が、ニッポン経済や企業経営といった大問題のみならず、たとえば町内会やらPTAやら草野球チームやら、身近で金儲け抜きの小集団のマネジメントにも使えそうなこと。デキる人とデキない人の棲み分け・使い分けから無駄な過労の避け方、士気の上げ方まで、人の集まりの中で苦労してるアナタが読めば「そうか!」と膝を打つ箇所がいくつもあるはず。

 著者の熊野英生は日銀出身ながら頭でっかちでない議論のできる民間エコノミストで、確か格闘技の達人。今回の一般新書デビューも期待どおりでした。

新潮社 週刊新潮
2019年2月21日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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