ハッブルを超えるスーパー望遠鏡で明かされる宇宙の秘密 宇宙物理学者が宇宙研究の未来とロマンを語る

インタビュー

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地球一やさしい宇宙の話

『地球一やさしい宇宙の話』

著者
吉田 直紀 [著]
出版社
小学館
ジャンル
自然科学/天文・地学
ISBN
9784093886369
発売日
2018/12/12
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ハッブルを超えるスーパー望遠鏡で明かされる宇宙の秘密 宇宙物理学者が宇宙研究の未来とロマンを語る

[文] 中野富美子

望遠鏡の性能が上がって、遠くの天体が見えるようになるということは、宇宙の昔の姿が見えるということ。ハッブル宇宙望遠鏡の数倍の性能をもつジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって宇宙誕生の謎が解き明かされるかもしれない。

建設中のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。一日も早い稼働が待たれる(NASA/Chris Gunn)
建設中のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。一日も早い稼働が待たれる(NASA/Chris Gunn)

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最新宇宙望遠鏡で宇宙の果てが見える!?

◎――吉田さんの著書『地球一やさしい宇宙の話』では、ファーストスター、巨大ブラックホールの謎を解き明かされました。今後はどんなテーマに挑む予定ですか?

吉田 これから巨大望遠鏡がいくつもできるので、それを使って見えるものは何かを考えています。
 とくに、2021年に打ち上げられる予定の「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は、現行のハッブル宇宙望遠鏡の後継という位置づけで、赤外線も捉えられるうえに、ハッブル宇宙望遠鏡よりはるかに遠い(つまり古い)宇宙の姿も見ることができます。これを使えば、現在までほとんど見つかっていない、太陽質量の1000万~1億倍の「中間質量ブラックホール」を見つけることができるかもしれません。
 また、ファーストスターが生まれたあと、超新星爆発によって次の世代の星々が生まれ、やがて銀河が生まれてきたはずですが、その宇宙初期の銀河を観測することもできる可能性があります。
 そうすると、理論のほうも連動して進化するはずで、考えるだけでも、ワクワクしてきますね。

◎――ということは、また宇宙の話が難しくなっていくわけですね。

吉田 いえいえ、望遠鏡の威力が増すということは、宇宙が誕生するころのことがわかるということです。太古の宇宙に思いをはせることは、宇宙を感じることに繋がります。
 芸術作品は、理屈であれこれ論評するより、まず感じることが大事ですよね。宇宙もまったく同じです。宇宙の専門家を目指しているならともかく、そうでないのであれば、宇宙については学習するのではなく、まず感じることが大切だと思うのです。
 何もなかったところから宇宙が生まれ、ファーストスターが生まれ、それが爆発してさまざまな元素ができ、また新しい星が生まれ、銀河が生まれ、太陽や地球が生まれて、ぼくたちが生まれました。つまり、ぼくたち人間は、宇宙の一部なのです。
 そして、「われわれはどこからきたのか」「われわれは何者か」「われわれはどこへ行くのか」という人類の大きな問いは、当然、宇宙につながっています。
 まずは、私が書いた『地球一やさしい宇宙の話』を通じて、それを実感していただけたらうれしいですね。

スペースシャトル・アトランティスから撮影したハッブル宇宙望遠鏡。宇宙に関する数々の謎を解き明かしてくれた(NASA)
スペースシャトル・アトランティスから撮影したハッブル宇宙望遠鏡。
宇宙に関する数々の謎を解き明かしてくれた(NASA)

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<プロフィール>
吉田直紀(宇宙物理学者)
1973年、千葉県生まれ。東京大学工学部航空宇宙工学科卒業、同大学院工学系研究科修了。2002年、マックスプランク宇宙物理学研究所(ドイツ)博士課程修了。ハーバード大学天文学科博士研究員、名古屋大学助教等を経て、東京大学大学院理学系研究科教授(現職)。カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員も兼任する。宇宙論と理論天体物理学の研究に従事し、スーパーコンピュータを駆使してダークマターやダークエネルギーの謎に挑んでいる。著書に『宇宙137億年解読』(東京大学出版会)、『宇宙で最初の星はどうやって生まれたのか』(宝島新書)、『ムラムラする宇宙』(学研)などがある。

インタビュアー 中野富美子

小学館
2019年2月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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