復興と尊厳 内尾太一著

レビュー

3
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復興と尊厳

『復興と尊厳』

著者
内尾 太一 [著]
出版社
東京大学出版会
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784130561174
発売日
2018/11/27
価格
4,104円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

復興と尊厳 内尾太一著

[レビュアー] 篠田英朗(東京外国語大学教授)

 東日本大震災の衝撃には、時間の流れとともに風化する面と、多様に広がっていく面とがある。9年目を迎える「3・11」は、外から来て被災地に関わった者たちの思いを整理する作業も、生み出している。

 本書は、被災地と長く接してきた「支援者・調査者」による、内省の書である。南三陸町(宮城県)を舞台にした支援活動を行った著者は、支援がもたらす贈与の負債としての性格を、問い直す。南三陸町を調査対象とした人類学者でもある著者は、被災地に対する人類学の有用性も、問い直す。支援の現場に携わった者や、調査の現場を知る者が、共感を覚える言葉が並ぶ。

 「エンパワーメント」などの外来概念や外国人学者の名前が次々と登場する。南三陸だけに関心がある読者であれば、読みにくさを感じるだろう。しかしこれもまた、9年目を迎える3・11をめぐる言説の現状だ。「人間の安全保障」の観点から見て、死者と生存者の「尊厳」は何か? そんな問いを、南三陸の人々が語っているわけではない。だがそれでも、われわれ「支援者・調査者」は考え続けていきたいのだ。(東京大学出版会、3800円) 

読売新聞
2019年2月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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