病理学教授が自らを実験台に“病気にならない生き方”に挑戦
[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)
一昨年出版された『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)が異例の20刷というベストセラー街道を驀進中の大阪大学大学院教授の仲野徹。自らが「二匹目のドジョウを狙った」と公言する本書は、前作よりさらに実生活に役立ちそうだ。
誰だって病気になんてなりたくない。でも一生、病気にかからない、なんてことはないだろう。それなら、ライフスタイルの中で少し気を付ければいいことや、万が一病気になったときの対処法を知っておくに越したことはない。好奇心の強い著者はわが身を実験台にして、体によさそうなことを体験する。
特に第2章“ダイエット「入門」の達人”は多くの人が共感するところ。2008年から始まった俗称・メタボ健診でひっかかると「痩せよう」と決心だけはする。だが成功者の話はなかなか聞こえてこない。
ダイエットフェチの仲野は話題のダイエット法を耳にすると、ついやってみたくなるそうだ。高い道具を使うものや怪しげな薬を使うもの、科学的根拠に乏しいものは科学者として許せないが、当人が納得できて長く続けられそうなものは試みる。結果、10キロ近く落とし20代と同じくらいで落ち着いているそうだ。
食餌制限と運動によるカロリー消費、毎日の記録、炭水化物制限、体改造系などの方法を論理的に解明していくのだが、最終的に成功したのは「きっちきち~」ダイエットだという。何それ?という方はぜひ読んでもらいたい。
ほかにも、特定の病気になりやすいことを知る遺伝子情報やアルコール依存症の危険性、がんは予防できるのか、など最先端医学で解明されている話題をかみ砕いて語っていく。
ノーベル賞受賞者、本庶佑先生の弟子であったことの自慢も忘れない。
インフルエンザが猛威を振るっているが、ウィルスとは何か、ワクチン接種の是非など知っていて損のない情報も満載されている。