戯れの魔王 篠原勝之著…評・戌井昭人(作家)

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戯れの魔王

『戯れの魔王』

著者
篠原 勝之 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784163909356
発売日
2018/11/21
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

戯れの魔王 篠原勝之著…評・戌井昭人(作家)

[レビュアー] 戌井昭人(作家)

 甲斐駒ヶ岳の麓にアトリエを構え、そこで生活をしているクマさんこと篠原勝之さん。普段は文章を書き、野菜を育て、蓮池を作るため穴を掘ったりしている。そして月に数日間都会に行く。

 後期高齢者になったクマさんは老いを感じつつ、抵抗したり、手術をしたりして、どっこいやっている。母を看取(みと)り、甲斐駒ヶ岳を登り、舞踏公演に参加し、仔猫(こねこ)を助ける。これらの出来事がクマさんのユニークな視点で書かれている。また、そのような日常が綴(つづ)られている中に、若い頃のヒリヒリした日々が回想されると、不思議な緊張が走るのが大変面白い。

 タイトルの「戯れの魔王」は、舞踏家マロ(麿赤兒(まろあかじ))との交流、さらに舞台に参加することになった自身を書いている。マロさんとクマさんは同学年だが、「すれ違いで、同ジダイに別々の世界を斜に過ごしてきていた」と本文にある。この二人が同じ舞台に立つだけで凄(すご)い事だ。そして山の日常が舞台の非日常に繋(つな)がっていく様がスリリングで、奮闘するクマさんに声援を送りつつ、いつの間にかこちらが力をもらっていた。(文芸春秋、1800円)

読売新聞
2019年2月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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