種の起源 チョン・ユジョン著 ハヤカワ・ポケット・ミステリ/あの子はもういない イ・ドゥオン著 文芸春秋

レビュー

8
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種の起源

『種の起源』

著者
チョン・ユジョン [著]/カン・バンファ [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784150019402
発売日
2019/02/06
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

あの子はもういない

『あの子はもういない』

著者
イ・ドゥオン [著]/小西 直子 [訳]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784163909752
発売日
2019/02/08
価格
2,484円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

種の起源 チョン・ユジョン著 ハヤカワ・ポケット・ミステリ/あの子はもういない イ・ドゥオン著 文芸春秋

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」から韓流ミステリー映画にはまった。次々と観(み)れば観るほどとりこになり、仕事の上でも影響を受けてきた。これは私だけの話ではないはずである。

 その一方、我が国からは多種多様なミステリー小説が翻訳されて輸出され、韓国で読んでもらえるという嬉(うれ)しい状況になって久しいのに、あんなに凄(すご)いミステリー映画を生み出す韓国のミステリー小説は我が国で紹介されることがなかった。これは何故(なぜ)ですかという問いかけにこの間までは、

 「韓国では文芸出版物は純文学が中心で、国産のミステリーやSFなどのエンタテイメント小説はあまり世に出ることがない」

 と、意外で残念なお返事をいただいてきた。

 しかし今ようやく、これまでの韓国文芸界の流れをくつがえす大きなエンタテイメント小説の波が起きている。この波の中心にいるのが若手の女性作家だというのは、我が国でも平成時代のエンタテイメント小説界で女性作家たちが活躍し、市場を広げ、作品世界を豊かにしてきたことと重なり合うようで、いっそう喜ばしい。『種の起源』の著者チョン・ユジョンさんは、「韓国のスティーブン・キング」と呼ばれているのだそうだ。主人公のハン・ユジンは二十五歳の法学部生。ある朝、血の臭いで目覚めると、自分は全身血だらけで、家のなかには母の死体があるのを発見する――というのが物語のつかみである。カン・バンファ訳。『あの子はもういない』の中心人物は落ちぶれた元芸能人の両親を持つ若い姉妹で、殺人の容疑を受けたまま失踪した妹の住まいを訪ねた姉は、室内に仕掛けられた数々の監視カメラに戦慄(せんりつ)する。妹の身に何が起こったのか。こちらの帯には「Kスリラー」の惹句(じゃっく)が光る。二作とも、家族関係の歪(ゆが)みを核にした緊迫のサスペンスで、濃厚な闇に呑(の)まれるような展開の先に、おお、そうくるかと震えてしまうラストが待ち受けています。小西直子訳。

読売新聞
2019年2月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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