思考力のトレーニング。「考える」「書く」「話す」の3サイクルを確立しよう

レビュー

5
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1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法

『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』

著者
山口揚平 [著]
出版社
プレジデント社
ISBN
9784833423137
発売日
2019/02/28
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

思考力のトレーニング。「考える」「書く」「話す」の3サイクルを確立しよう

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

本書の目的は、「考える」ということを新しく定義し直し、それを伝えることにある。

昨今のAIやロボットの隆盛、または仕事の生産性を高めようという背景から、人間に与えられた最後の武器である「考える」力を養おうという動きが加速している。

皆さんも職場で、上司から「考えろ、考えろ」とハッパをかけられることは多いと思う。

しかし実際のところ、「考えるとは何か?」が本当にわかっている人はわずかであろうし、ましてやそれをひと言で伝えることは難しい。 そこで本書では、考えるとはどういうことかを“感じる”ことができるように書いた。

本書は読む本というより“浴びる”本である。本書を読み進めることで、読者は自然と自分の抱えている問題が解決されていくのを実感できると思う。(「はじめに」より)

これは、『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(山口揚平著、プレジデント社)の冒頭に書かれた著者のことば。

たしかに、さまざまな情報を簡単にキャッチできる現代においては、自発的に「考える」機会は意外に少ないのかもしれません。

でも、自分の力で考えることができるようになると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

この問いに対して著者は、「悩みや不安が消えたり、社会の同調圧力や周囲に振り回されなくなったり、仕事でも成果を挙げやすくなる」と答えています。

「100あるタスクのなかから、本当に行うべきたったひとつの答えが見つかる」のだとも。その本質を見抜くことは簡単ではないけれども、コスパが最も高い方法だというのです。

そんな本書の第2章「短時間で成果を出す思考の技法」から、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

思考力を鍛える「3つのサイクル」

著者によれば、思考力を鍛えるために必要なのは「考える」「書く」「話す」という3つのサイクルを確立すること。

そして、まず思考力を鍛えるうえで意識すべき習慣は、「考えることにコミットすること」。

物事には、常にその本質が存在するもの。考えることによって、誰でもいつでも、その本質に到達することができるわけです。そして理想的なのは、「(自分の分析が)なにか気持ち悪い」と感じなくなるまで考え続けること。

次に「話す」うえで大切なのは、口癖。「たかが口癖」と思いたくもなりますが、それは決して侮れるものではないというのです。

「本質的には~」と口ずさむ習慣をつければ、出てくることばはおのずと本質的なものになるというわけです。

最後の「書く」こととは、思考を形にすること。どれだけ考えても、形にしなければなんの意味もないということです。しかし紙に書けば、そこで初めて思考が固定されるわけです。

そのため、問題を捉えたいときや構造化をしたいときには、とにかくまず紙に正方形や縦軸・横軸を描き、図にしてみるべき。

違和感がなくなるまで何枚も書き、本質がどこにあるのか仮説を立て、それを検証する行動をなにかひとつとってみる。

その結果、そこから得られた効果によって、「本質的であるかどうか」を測ることが可能。だからこそ、メモを取る習慣は決定的に重要なのだと著者は主張しているのです。(72ページより)

頭をよくしたいなら油を変えよ

書店では多くの「脳トレ」関連書籍を見つけることができますが、本質に立ち返ると、もっとも重要なのは脳のコンディションを上げることだと著者はいいます。

具体的には、脳のCPUにあたる脳幹の炎症をいかに抑えるかがポイントだというのです。

私がそれに気づくきっかけとなったことの一つが、母親が若年性アルツハイマーにかかったことだった。

これはアミロイドβというタンパク質が脳内に溜まることで炎症が起き、認知力が落ちる病気である。

私の地の半分は母親からきているわけで、そんな自分の脳のコンディションを維持すべく、日々摂取する料理で使う油は良質なもの(ココナッツオイル、亜麻仁油、オメガ3を含む油、エクストラバージンオイルなど)にこだわっている。サラダ油は摂取しない。(80ページより)

「頭をよくするには勉強しないといけない」といった常識から距離を置き、「そもそも“頭の状態がよい”とはなにか」を考え、医学的な根拠に基づいて問題を検証した結果、「油を変える」という選択肢を見つけたのだそうです。(79ページより)

頭をクリアにする環境を整える

実際、著者が普段からもっとも頭を使っていることは、「もっとも頭を使える環境をつくり出すこと」なのだといいます。

具体的には、つぎのようなことを日々心がけているというのです。

1 身体のコンディショニング

・ 良質な油の摂取、栄養バランス、良質な睡眠、ストレッチなど

・ 情報とノイズの遮断(パソコンから離れる、テレビを見ない、新聞を読まないなど)

2 ストレスの軽減

・ 会う人を選ぶ

・ 人の多いところに行かない(満員電車に乗らないなど)

3 静謐(せいひつ)な空間の追求

・ 整理整頓

・ 雑音の遮断など

(81ページより)

その他、掃除も有効だといいます。机や部屋が散らかっていると、意識がそこに吸着して拡散してしまうもの。

そのため、肝心の思考作業に割く脳の処理能力が知らず知らずのうちに不足するというのです。(80ページより)

仕事で判断の質を上げる簡単な方法

著者いわく、思考とは、次元を超えて意識を縦横無尽に動かし、情報や知識、概念をピックアップして分離・結合させる作業。

そのため、動かす筋肉(意識)も整っていなければいけないのだといいます。

アスリートが運動する前に身体のストレッチを入念に行うように、あるいは弓道の世界で弓を引くまでの所作が重視されるように、ブレイン・アスリートにとって意識を整えることは基本所作。

それができていないと、意識は全体を俯瞰する高度まで上がらないという考え方です。

マインドフルネスが流行しているのも、情報過多の社会において「とっちらかった自分」をどうにかしたいという潜在的な欲求があるからだろうと著者は分析しています。

悟りの世界では、マインドとは自我(ノイズ)であり、意識を整えることによってそのマインドを溶かしていく作業が禅や瞑想だということになるのだそうです。

いずれにしても、そうした自我を溶かす作業はとても有効だということ。

意識を整える一番簡単な方法は、呼吸の仕方である。 私は考える仕事に取り掛かる前に、必ず呼吸を整える。

YouTubeでハタ呼吸法の5~6分の動画を流しながらそれに合わせて呼吸を整え、自我(マインド)をノイズアウトする。

最も生産性の高い仕事とは「本質を突いた判断をすること」であり、落ち着いて整った意識の状態こそが判断の質を上げる。(83ページより)

たったこれだけのことであれば、簡単に試してみることができそうです。(82ページより)

本質にたどり着くには「洞察力」が欠かせない

意識が整ったら、次は具体的な思考作業に入る段階。イメージとしては、意識という名のドローンを徐々に上空へ上げるような感覚。

実際には時空間の幅を広げつつ、対象の裏の裏のそのまた裏を探っていくという、立体的で複雑な作業になるのだそうです。

しかしこのプロセスは、言語化するのが難しいものでもあります。

事実、スタッフや同僚の前で、あるいは企業の研修中に身振り手振りで行って見せても、その意識の動きは伝わりづらいのだといいます。そのため、大半の人がこのステップで挫折するそうなのです。

「抽象化しないといけない」「俯瞰しないといけない」とわかっていても簡単にいかないのは、抽象化するという作業は、線のように細長く、論理的な作業ではなく、洞察的で形而上的(理念的)な作業であるから。やるべきことはあくまでも、意識をより高い次元にスライドさせること。

たとえば業務レベルの上位概念が「部署レベル」であり、その上が「会社レベル」であるというような、目に見える連鎖はわかりやすいでしょう。

しかしそこで地球環境や貨幣・経済のこと、20年後の自分のことまで考えられるかといえば、それは根気よく鍛錬するしかないわけです。

だとすれば、論理的な人ほど抽象化が得意だということになるのでしょうか? 実はそうでもなく、「イメージングする力(右脳)」と「ロジカル・シンキング(左脳)」の両方があって初めて物事の本質へとたどりつくことができるのだといいます。

稀代の戦略家・クラウゼヴィッツ氏は『戦争論』(中公文庫)で次のように述べている。

「論理的に導かれた結果は、あくまでも“判断を助ける道具”として扱わねばならない。知性の活動は、論理学や数学といった厳密な科学の領域を離れ、最も広い意味での芸術の領域に入る。

ここでいう芸術とは、数え切れないほどの事象や関係の中から、決定的に重要なものを、判断力を働かせて見つけ出す技能である。言うまでもなく、この判断力には、すべての力や関係を本能的に比較する能力が含まれている。

同時にそれは、関係性の低いものや重要性の低いものを即座に脇へ推しやり、演繹(えんえき)法では到底不可能な速さで当面の最重要課題を認識するのである」(85~86ページより)

つまり、本質的な思考は左脳から生み出される論理的思考でもなく、右脳的な直観力や創造力だけでもないということ。

人間の持つ左脳と右脳の、不思議で微妙なバランスによって生み出される洞察力が重要だというわけです。

そして、もしも圧倒的な成果を出したい(早く成長したい、もしくはイノベーションを起こしたい)のであれば、超スパルタのブレイン・トレーニング(頭の筋トレ)をする感覚で、「メタな視点を持つ」「物事の裏側を見続ける」ということをストイックに実践し続けなければならないと著者は主張しています。(84ページより)

本書の目的は、思考の技術を伝授することではなく、読むプロセスを通して読者の意識をさまざまな方向に誘うことなのだそうです。

忙しい日々を送るなかにあっては、考えることを意識する機会はなかなかないもの。だからこそ本書を通じ、改めて本質を確認しなおしてみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

Source: Amazon

メディアジーン lifehacker
2019年3月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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