釜ヶ崎合唱団…釜ヶ崎炊き出しの会編著 ブレーンセンター

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釜ヶ崎合唱団<労働者たちが波乱の人生を語った>

『釜ヶ崎合唱団<労働者たちが波乱の人生を語った>』

著者
釜ヶ崎炊き出しの会 [著、編集]
出版社
ブレーンセンター
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784833905527
発売日
2018/11/22
価格
2,750円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

釜ヶ崎合唱団…釜ヶ崎炊き出しの会編著 ブレーンセンター

[レビュアー] 藤原辰史(農業史研究者)

 読み出すと止まらなくなる。大阪市西成区の釜ヶ崎(あいりん地区)に流れてきた日雇い労働者たちが半生を語った本書は、まるで日本現代史の血と肉と骨のようだ。

 親の酒乱、暴力、蒸発。少年院、暴力団、逮捕、刑務所。ギャンブルに女遊び。これらの経歴は本書の登場人物のなかにたびたび登場するが、それらは全てではない。

 不況、倒産、借金、裏切り、詐欺。景気の変化で真っ先に深手を負い、周囲に不幸が広まる前に責任を一身で背負った人びとがなんと多いことか。貧困ビジネスや強制立ち退きも襲いかかる。そんな時期に限って家族の死や怪我(けが)や病気などの不運が重なる。

 驚くのは、そういった不運を背負った人びとの学への情熱と痛みを持つ隣人への優しさである。工夫された生活技術。小説や哲学書や歴史書も読む。弱い立場にある人や動物を気遣う。炊き出しを手伝うのも、善意で成り立つ活動への深い理解と共感からだ。

 五輪、万博、道路やビルも危険を冒しながら彼らが作った。読者の隣人であり分身である人びとの言葉に今こそ耳を傾けたい。

読売新聞
2019年3月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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