南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる…渡貫淳子著 平凡社

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南極ではたらく

『南極ではたらく』

著者
渡貫淳子 [著]
出版社
平凡社
ISBN
9784582837957
発売日
2019/01/24
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる…渡貫淳子著 平凡社 1400円

[レビュアー] 通崎睦美(木琴奏者)

 「かあちゃん、悪いんだけどさ。俺、皆勤かかっているから見送りは行かないよ」。とは、出国の日の息子さんのせりふ。

 1人の主婦が一念発起し、南極地域観測隊調理隊員に応募。3回目にして採用された。著者は「かあちゃん」ながら、あくまでも1人の女性として、南極豆知識を交えながら、南極での生活と仕事ぶりを、素直な筆致で描く。

 越冬隊、2人の調理隊員は、期間2か月の夏隊が帰った後の1年間、30人分の1日3食に加え、おやつや夜食、弁当までを取り仕切る。それは、1年間補充なしの状況を見据え約2000品目、30トンを超える食糧の仕入れに始まり、「水使用量」「排水」「生ゴミ排出」制限下での調理へと続く。和洋中とりまぜての日常食はもとより、日本の季節に合わせて、春の花見弁当、お彼岸のおはぎ、クリスマスなどのパーティー料理も含まれる。

 当地では、除雪や物資運搬で男女の力差を感じることが多い。しかし<無線から女性の声が聞こえてくるだけで空気が和む。男性だけの生活より衝突も起こりにくい>と言われ、<男性も女性もいて社会>と納得する。南極では、表面的な男女平等ではなく、真の対等が実現しているようだ。

 著者は、ローソン売り上げ累計1000万個突破「悪魔のおにぎり」の考案者。本著では、名前の由来や作り方が公開される他、いくつかのリメイク料理レシピが掲載されているのも嬉(うれ)しい。鍋の縁にこびりついたものも排水の汚れとなるので「お鍋をきれいにしながらもう一品」と、ミートソースの残りにじゃがいもを投入、味を調えミートコロッケの具に。カレーのこびりつきにも野菜を入れてカレースープにする。そんな話を読むうち南極気分になり、レンコンの端っこを刻んでハンバーグに入れてみたりして、節約工夫料理にいそしんでいる。自宅の冷蔵庫が食糧倉庫に思えてくるから可笑(おか)しい。

読売新聞
2019年2月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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