「作戦」とは何か…中村好寿著 中央公論新社

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「作戦」とは何か

『「作戦」とは何か』

著者
中村好寿 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784120051609
発売日
2019/01/21
価格
2,484円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「作戦」とは何か…中村好寿著 中央公論新社

[レビュアー] 篠田英朗(東京外国語大学教授)

 「作戦」の重要性について論じた理論書である。「作戦(operation)」とは、「戦争における各種の軍事行動」を指すが、その重要性は、「戦略」と「戦術」の三階層の真ん中に位置することにある。戦略(目標)と戦術(手段)を活(い)かすも殺すも、「作戦」(方法)次第だ、というわけである。

 この考え方自体は、軍事領域に限らず、広くあてはまるだろう。一般に用いられる「プロジェクト」は、似た概念だ。目標を追求する戦略と、資源投入の戦術の間にあって、「やり方」の仕組みを定める方法論が持つ重要性は、決定的だ。

 軍事理論に精通した著者は、「作戦」レベルで必要とされる「科学的思考」と「技能的思考」を、豊富な知識で説き明かしていく。軍事理論特有の定義で、次々と興味深い概念が設定されていく様子は、さすがだ。

 また本書が紹介する「作戦」の歴史も興味深い。絶対君主時代には「作戦」は存在せず、ナポレオンが「作戦の起源」だという。それが19世紀プロイセンの軍事理論家によって発展した。アメリカは伝統的に「消耗戦」を重視する思考を持っており、戦争では火力で相手を圧倒しようとしてきた。ところが1991年の湾岸戦争のときから「作戦」重視の傾向が強まり、「重心」への打撃や効果的な「影響」が研究されるようになった。

 21世紀になると、戦争後の治安維持などを狙った「作戦」が課題となった。多様な非国家アクターを相手にする今日の複雑な紛争においては、複雑な問題を扱う「システミック作戦デザイン」が重要になっているという。

 著者は、企業活動においても、「多くの日本人は作戦を否定するか、さらに悪いことには無視してきた」と指摘する。「“一つ”の決定的な戦闘によって“早期”に終結させたい」願望にとらわれるのは危険だ。戦略と戦術を結び付ける「作戦」という方法論への関心こそが、指導者に必要だという指摘は、奥深い。

読売新聞
2019年2月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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