<東北の本棚>被災者を思い、常に挑戦

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羽生結弦は捧げていく

『羽生結弦は捧げていく』

著者
高山 真 [著]
出版社
集英社
ジャンル
芸術・生活/体育・スポーツ
ISBN
9784087210675
発売日
2019/02/15
価格
946円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>被災者を思い、常に挑戦

[レビュアー] 河北新報

 2018年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪フィギュアスケートで66年ぶりの男子連覇を果たし、国民栄誉賞を受賞した仙台市出身の羽生結弦選手(ANA、宮城・東北高出)。その「絶対王者」の心技体の強さや進化に向かう気概を無類のフィギュアスケート好きのエッセイストが丹念に分析した。前人未到の領域に挑もうとする羽生選手のすごみが伝わってくる。
 けがのため、ぶっつけ本番に近い状態で平昌冬季五輪に臨み、栄冠を手にした羽生選手の演技を詳細に分析。羽生選手のスケーティングが、いかに奇跡的だったのかを伝えている。
 羽生選手が五輪後に現役続行を決断したことを、著者は「重く、尊いもの」と受け止めている。「(羽生選手は)ある種の明確な理想像を持っている。その理想像に自分を捧(ささ)げるために、さらにハードルを上げたのではないか」と推察。自分の限界を超える演技を常に目指すという意識の高さを強調している。
 羽生選手の魅力については、競技では貪欲な姿勢や驚異的な難易度のスケーティング、中性的な美しさを備えた芸術性などを挙げる。さらに競技を離れたところで見せる「無私・滅私」の献身的な姿勢が多くの人を魅了していると指摘。「勝ち負けに固執」(羽生選手)した大きな理由として、著者は「勝つことが被災者の方々の力になると、骨の髄まで感じていたからではないか」と察している。
 宇野昌磨や高橋大輔、ネーサン・チェン(米国)、紀平梨花、坂本花織、アリーナ・ザギトワ(ロシア)ら国内外の19選手の魅力も紹介している。
 集英社03(3230)6080=929円。

河北新報
2019年3月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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