仕事で成果を出したいなら「思考」と「行動」のルーティンを変えてみる

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仕事で成果を出したいなら「思考」と「行動」のルーティンを変えてみる

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

仕事の「成果」は、必要な「スキル」のうち最も弱いスキルに影響されるもの。

だからこそ仕事で成果を上げるためには、さまざまなスキルがある一定レベル必要。

特に変化が大きく、業務が複雑になってくると、ますます多様なスキルが求められるーー。

最高の成果を生み出す ビジネススキル・プリンシプル』(中尾隆一郎著、フォレスト出版)の著者は、そう主張しています。

リクルートに勤務した29年間において、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートワークス研究所副所長を歴任してきたという実績の持ち主。

2019年からは、自身が学んだマネジメントを世の中に広げるべく中尾マネジメント研究所(NMI)を設立し、成長を強く思考する企業の組織拡大を支援しているのだそうです。

この『最高の成果を生み出す ビジネススキル・プリンシプル』にまとめたスキルは、2つの情報ソースから作りました。

1つは、15年前に私が書いた本の内容のうち15年を経た現在でも活用できるものを再編集しました。

もう1つは、この15年で様々なリーダーの仕事ぶりと私自身の経験から学んだスキルを新たに書き起こしました。(「はじめに」より)

つまり時間を経ても価値が下がることのない普遍的な考え方と、15年間に見聞した新たなスキルによって構成されているということ。

きょうはそのなかから、第4章「思考と行動のルーティンを変える」に注目してみることにしましょう。著者によればこの章は、以下のような方に役立つそうです。

□数年後にキャリアアップできているのか不安な人

□毎日努力はしたいけれど、その仕方がわからない人

□継続は力だと思っている人

(「はじめに」より)

新聞・雑誌・インターネットからの情報の取り方

著者は講演を頼まれたときや企画書をつくるとき、ターゲットとなる人々がよく読む雑誌を事前に読むようにしているのだといいます。

そうすれば、その人たちに伝わる「フレーズ」や「表現」を事前に知っておくことができるから。

また、そんな習慣を続けるなかで気づいたのは、同じ内容なのに雑誌あるいは新聞によって表現が異なること。

「川は両岸から見て川」という言葉があります。川の景色を片側から見るのと、反対側から見るのとでは、大きく異なるケースがあるという意味です。

転じて、ある事象に関しての意見を片側から聞くだけでは不十分で、反対意見にも耳を傾けるべきであるという戒めです。(139ページより)

とはいえ、毎日複数のニュースソースを読み続けるのは大変なことでもあります。

著者も自宅で読む新聞は「日経新聞」だけですが、重要な事項に関してはCNNや他の新聞アプリで確認するようにしているのだそうです。

その結果、メディアごとの解釈の違いに愕然とすることもあるのだとか。

言い換えれば、そうやって比較をしないと知らず知らずのうちに特定のニュースソースの論調に引っぱられてしまう可能性もあるということ。

他の意見を知りつつ、その意見を信じるのであれば問題はありません。が、ひとつの意見しか知らず、それに凝り固まってしまうのは判断を誤る第一歩になってしまうというわけです。

つまり、ひとつの情報源にのみ頼ってはいけないということ。

実際のところインターネット上にはフェイク(偽)ニュースも氾濫しているので、それらに騙されないようなニュースリテラシーが必要となります。

そのため、複数のニュースソースで確認する習慣をつけることが重要だということなのです。(138ページより)

SNSからの取引先情報の取り方

営業のテクニックである「アイスブレーク」とは、文字どおり「氷を溶かす」という意味。初対面の顧客との「緊張感」=「氷」を溶かすということです。

そして、アイスブレークのテクニックのひとつが「ラポールを築く」という方法。共通の話題をみつけ、それを話題にすることでアイスブレークさせようというものです。

著者も初対面の相手と会うときには、可能な限り事前情報を集めてラポールのネタを探すのだといいます。

その際に重要なのは、会社の情報と個人の情報、2つの観点によって集めること。

まず最初にすべきは、会社の情報についてウェブサイトをチェックして確認すること。そして、その際に押さえておきたいのは、会社が掲げている方針や戦略のキーワード

上場企業であれば、IR情報のなかに株主総会の決算説明資料や中期経営計画資料があるものです。

そこに載っている今年あるいは3カ年計画のキーワードを読めば、大きな戦略が理解できるというわけです。

同時に、企業の沿革もチェックしておくことが大切。企業の歴史のなかからも、その会社が大事にしていることを見つけることができるからです。

また、社長の年頭所感、役員のプロフィールを見て、大学や過去の在籍企業で自分自身と接点がないかチェックすることも重要。

個人の場合は、Google、Yahoo検索のほか、各SNSなどで情報を収集。Facebookで共通の友だちを確認したり、投稿している記事を読むことで共通点を見つけ出すことができるわけです。

相手が本や記事を書いている人であるなら、それらも必読。時間がなくて本が読めない場合は、Amazonのレビューを参考にするのもひとつの方法だといいます。

事前に情報収集ができない場合に取り入れたいのが、「名刺を見て質問をする」方法。

名刺を見て質問することが習慣化できると、ラポールネタを発見できるだけではなく、相手に興味を持つ習慣もついてくるそうです。

一番簡単なのは「名前を確認する」ことです。誰でも自分の名前には思い入れがあります。読みにくい漢字などは特にそうです。

名前の由来などを聞くと話しが弾むことが多いです。

あるいは、出身などを尋ねると、「○○県に多いのですが、30人しかいない名前です」などと盛り上がることも少なくありません。(143ページより)

名前について質問できるとことがない場合は、社名の由来やロゴのデザインに関する話題も有効。また、なにもない場合は住所の周辺の話で盛り上げることも可能。

ただし、名刺情報による質問は最後の手段。あくまでも事前の情報収集を行うようにするべきだということです。(141ページより)

ギブ・アンド・テイクの本質

コミュニケーションの基本は「ギブ・アンド・テイク」。スティーブン・R・コヴィー博士の提唱する「7つの習慣」においては、「Win-Win」と表現されています。

「Give & Take」は「与えて」「もらう」という意味ですから、両者ともに得をするということ。

「Win-Win」は両者とも「優っている」状態。片方が我慢して損をする「Win-Loose」 あるいは「Loose-Win」の状態や、双方が損をしている「Lose-Lose」はよくないということです。

ギブ・アンド・テイクに関して気をつけなければいけないのは、たとえば顧客に対して「Give」していたつもりになり、顧客が「満足している」と考えてしまうこと。なぜなら実際には、満足してもらえていなかったということもあるからです。

著者によれば顧客との関係は、「Giveを複数して、やっと顧客にGiveがあったことを認識してもらえる」というくらい困難なこと。

つまり正確には、「Give & Give & Give & Give……& Take」だというのです。

また、こちらが一定期間Giveをしたつもりなのに発注してもらえなかったというような場合は、次のどちらかの理由によるといいます。

1) こちらはGiveしたつもりでも、顧客はそう思っていない。

2) 顧客にニーズがない。つまり、ターゲティングのミス。

(146ページより)

「ギブ・アンド・テイク」を実践するためには、これらの背景を理解する必要があるということです。(144ページより)

「興味を持ったページだけ読んでも内容が理解できる構成にしています」という著者の言葉どおり、どこからでも読める点が魅力。

必要なスキルを、効率よく吸収できるわけです。ビジネススキルを高めたいという意欲を持ちの方は、手に取ってみてはいかがでしょうか。

Photo: 印南敦史

Source: フォレスト出版, 中尾マネジメント研究所

メディアジーン lifehacker
2019年3月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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