<東北の本棚>苦しみも悲しみも共に

レビュー

4
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

福島のお母さん、いま、希望は見えますか?

『福島のお母さん、いま、希望は見えますか?』

著者
棚澤 明子 [著]
出版社
彩流社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784779125614
発売日
2019/02/28
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>苦しみも悲しみも共に

[レビュアー] 河北新報

 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故から8年。福島にとどまる、避難する-。子どもたちの命を守りながら、さまざまな決断を迫られた母親9人の8年間と、「今」の気持ちに耳を傾けたインタビューの記録。母親たちが率直に語る言葉は、何より重く、何より深い。あらためて事故が引き起こしたものの重大さを思い知る。
 自然豊かな飯舘村での自給自足の暮らしを失った村上日苗(かなえ)さん。大好きな自然を失った喪失感は強烈だったという。三重県に避難し3年、4年たっても涙は止まらなかった。「自然とともに生きてきたのに、突然自然と断ち切られ、生きている感覚をチョキンと切られてしまった」という言葉が、胸に迫る。
 「避難してもしなくても苦しいなら私は私の人生を生きようと思ったら、世界が開けた」。村上さんは子ども4人と京都府へと移り、自然食品店をやりながら料理教室を開く。
 「避難したときは、時が解決してくれると思っていた。でも違うと分かった。苦しみも悲しみも共に生きていくしかない。与えられた場所に自分の足で立って、自分で自分を幸せにするしかない」。苦しんだ末に行き着いた新たな道に、村上さんの強い覚悟を感じる。
 避難先の山形県で借り上げ住宅に住み続け、県から提訴された武田節子さんは「原発事故も避難も私たちの責任ではない。国と東電の責任。それなのに、住宅の無償提供を一方的に打ち切るなんて許されるのか」と憤る。「自分を大事にすることは、相手を大事にすること。誰もがそう考えられるようになったら、この国はもうちょっと優しくなれる」
 著者は東京都在住のフリーライター。自身も子ども2人を持つ母として、福島に何度も足を運び、母親の声を拾ってきた。前作「福島のお母さん、聞かせて、その小さな声を」の続編。
 彩流社03(3234)5931=1944円。

河北新報
2019年3月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加