『天才を殺す凡人』
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全ての人の中に存在する「天才」を育てるために
[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)
デビュー作の『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が12万部のベストセラーとなっている北野唯我の2作目『天才を殺す凡人』が発売2カ月で7・5万部と好調だ。この本は30万PVを超えた話題のブログ「凡人が、天才を殺すことがある理由。」を書籍化したものである。「天才・秀才・凡人の才能論」を軸に、ストーリー形式で才能とは何か? 才能を活かすにはどうしたらいいか?を紹介している。
この世界は天才と秀才と凡人でできている。独創的な着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人(=天才)。論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人(=秀才)。感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人(=凡人)。天才は秀才には興味がなく、凡人には本当は理解してほしいと思っている。秀才は天才に妬みと憧れの相反する感情を抱き、凡人のことを見下している。凡人は天才を理解できないので排斥し、秀才のことを天才だと勘違いしている。
三者は軸(その人が「価値」を判断する上で前提となるもの)が違うので、永遠に話が合わない。天才は「創造性」という軸で、秀才は「再現性(≒論理性)」で、凡人は「共感性」で物事を評価する。また主語も違うという。凡人は人をメインで語り、秀才は組織やルールなどの善悪で、天才は世界や真理など、超越した何かで語る人が多いという。この三者の間を取り持つのが、二つの才能を掛け合わせた能力を持っているアンバサダーと呼ばれる人たちである。
才能はその才能に合った武器(自分の才能を最も表現しやすい方法)があって初めて成り立つ。人の才能はゼロか100かではなく、少しずつ持っている創造性、再現性、共感性の優劣によってそのカテゴリーが決まる。全ての人の中に天才・秀才・凡人が存在するのだ。天才とは「自分に合う武器」を手にした上で、「ストッパー」を外した人間のことである。何よりも大事なのは自分の中のストッパーとなる存在を取り除くことだ。そして自分の中の天才を育てることで才能は開花していくのだろう。