新書アフリカ史 改訂新版…宮本正興、松田素二編 講談社現代新書

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改訂新版 新書アフリカ史

『改訂新版 新書アフリカ史』

著者
宮本 正興 [編集]/松田 素二 [編集]
出版社
講談社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784065139486
発売日
2018/11/14
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

新書アフリカ史 改訂新版…宮本正興、松田素二編 講談社現代新書

[レビュアー] 藤原辰史(農業史研究者)

 地図帳を横に置いて、アフリカ大陸のページを開き、本書を二週間かけて読んだ。川、湖、山、砂漠、都市、国の名前が最初はなかなか頭に入らないが、書き手の熱意も手伝って読み進めるうちに親近感が湧いてくる。人類史開闢(かいびゃく)から現代までのアフリカの知識が増え、歴史の見方も少し変わる。アフリカ史は西洋やそれを模倣した日本の歴史学の枠組みではつかみきれない。非定型の歴史のうねりに圧倒される。

 読みどころとして三点だけ挙げておきたい。

 第一に、ニジェール、ザンベジ・リンポポ、コンゴ、ナイルそれぞれの河川で発展した独自の国家や文化があった。現在の考古学・歴史学の見地からすると、古代、中世、近代の王国や都市国家の文化水準と経済の豊かさは相当なもので、「暗黒の大陸」という呼称がどれほど西欧の傲慢(ごうまん)な目線であったかを思い知らされる。

 第二に、西欧列強進出以前のアフリカ大陸の交易の歴史。列強に「発見」されるアフリカという図式は、現在のビジネス界のアフリカ熱にいたるまで意外と根強い。本書はそれをひっくり返す。アフリカの、外部世界との学問や商業の交流はダイナミックだった。砂漠という海をラクダの「艦隊」がオアシスに頼りつつ進んで行くといった「トランス・サハラ交渉史」も必読。現在のケニアやタンザニアのあたりはインド洋の季節風を利用したアラビアとの交易が盛んであり、イスラーム化が進展する。

 第三に、アフリカ人の主体性と西欧列強への抵抗の足跡を追うこと。歴史の教科書の付属物にされがちなアフリカ大陸は世界史の矛盾の最も激化する地域であり、ゆえにユニークな和解文化が存在する。南アフリカの真実和解委員会は、アパルトヘイトの犯罪に対し、法の裁きではなく、加害者の話を被害者が聞き、赦(ゆる)すという西欧にはない和解のプロセスをとった。

 アフリカを学ぶ。アフリカから学ぶ。歴史に関心のあるすべての人に本書を勧めたい。

読売新聞
2019年3月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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