<東北の本棚>仲間を集めて悪に挑む
[レビュアー] 河北新報
江戸時代に人材の仲介業を営む口入屋(くちいれや)の主が、仲間と力を合わせて江戸の危機に立ち向かう時代小説だ。着想の妙とキャラクター造形が巧みで、悪党を懲らしめる内容に胸がすく。
時代設定は幕末の黒船が来航した時期。麻布谷町にある山吹屋の賢之丞(けんの じょう)は、人を仲介する口入屋だ。人を見る目が確かな賢之丞は、多岐にわたって人材を世話していた。
そんな賢之丞のところに、正体の知れない浪人から、花火師と猟師、鉄砲鍛冶(かじ)をそろえてほしいという依頼が舞い込む。不審に思った賢之丞が調べを進めていくと、依頼の背景に江戸を揺るがすような壮大な陰謀が潜んでいることが分かってくる。
器量が良くて機転が利く元女郎みねや探索能力にたけた読売屋の弐吉と参吉、忍術修業に励む佐助、すご腕の剣術使いの孫太夫…。賢之丞は多士済々の仲間を集めて、悪に挑む。
権謀術数が渦巻く中、知略を駆使して悪党に一泡吹かせる展開は痛快だ。著者ならではのユニークな設定と小気味良いテンポ、人情の機微の描き方が光る。
著者は1960年久慈市生まれで岩手県金ケ崎町在住。2000年に「エリ・エリ」で小松左京賞、14年に「風の王国」(全10巻)で歴史時代作家クラブ賞のシリーズ賞を受賞。
光文社03(5395)8116=756円。