<東北の本棚>取材重ね、心模様に迫る

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天皇の憂鬱

『天皇の憂鬱』

著者
奥野 修司 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784106108051
発売日
2019/03/15
価格
864円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>取材重ね、心模様に迫る

[レビュアー] 河北新報

 2011年4月27日、天皇皇后両陛下は宮城県南三陸町を訪問された。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手、宮城、福島3県の被災者を見舞うのはこの時が初めてだった。
 冷え冷えとした歌津中の体育館。千葉みよ子さんは、夫と夫の両親、一人娘を亡くした三女と、天皇陛下に対面した。行方不明の3歳の孫娘の写真を、陛下は冷たい床にひざまずき、じっと見つめた。
 「かわいいお孫さんですね」「見つかるといいですね」「体だけは気をつけてください」。千葉さんは三女と命を絶とうと思い詰めていたが、陛下と話して心を打たれ、何とか頑張ろうと前を向けたという。
 筆者は、震災被災者を取材して天皇の「寄り添う力」を強く感じ、理解したとつづる。平成は天災の時代だった。雲仙・普賢岳の噴火、阪神大震災、各地の地震や豪雨。多くの被災地に両陛下は出向き、被災者と心痛を共にした。
 本書は、宮内庁関係者や学友ら100人以上への取材を基に、「天災」「終活」「戦争」「恋愛」など6つのテーマで天皇の心模様に迫る。厳しい制約の中、何事も一人で決定しなければならない天皇の憂鬱(ゆううつ)が垣間見えてくる。
 著者は1948年大阪府生まれ。「ナツコ」で大宅壮一ノンフィクション賞。
 新潮社03(3266)5111=864円。

河北新報
2019年4月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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