『教養としての政治学入門』
書籍情報:openBD
首相の出身大学が政治の教養を問う『教養としての政治学入門』
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
政治的な書、です。
大学の法学部が政治学の研究者の共著として出す『教養としての政治学入門』だもの、まずは政治の書なのだけれど、上品に、でも、濃厚に立ち昇ってるのは、政治的な書の匂い。
この国では、政治的というレッテルはマイナス評価に直結してて、これを貼られると作品は貶(けな)され、人は疎まれ、芸人は干される。もっとも政治は性事(ポルノ)、見ないふりしてホントは見たい。この本を紹介するのにいきなり政治的な書と決めつけた理由のその1も、政治の書と聞けば敬遠するアナタが、ほら、こうして興味を持ってくれるからです。
が、理由は別にもあって、それはこの新書が、いや、この出版が、世が世なら弾圧されそうなほど、文字どおり政治的であるゆえ。
コネは強いがオツムは弱いと評判の最高権力者の長い治世の果てに、その出身大学の出身学部の出身学科の教員たちが、政治の教養を看板に掲げた書物を、研究書ではなく入門書として世に送り出す―そこに明確なメッセージを感じないというアナタは、安倍嫌いでも安倍好きでもない呑気なノンポリで、羨ましい。
中身の方は、あからさまに政治的ではないものの、“政治の幅広い局面を専門家12人が平易に語る社会人講座”の中に、ニヤリとしたり背筋が凍ったりする話も山盛り。ワタシは楽しめたし、アナタにもお薦めしますが、一番読むべきは、かつてこの成蹊大学法学部政治学科で学んでたはずの総理だね、やっぱり。