<東北の本棚>言葉こそ生き抜く力に

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

復興と民話

『復興と民話』

著者
石井正己 [著、編集]/やまもと民話の会 [著、編集]
出版社
三弥井書店
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784838233472
発売日
2019/02/25
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>言葉こそ生き抜く力に

[レビュアー] 河北新報

 東日本大震災の被災地、宮城県山元町、隣接の福島県新地町などを舞台にした民話の会の7年の活動をまとめた。悲しみ、怒り、戸惑い、そして喜び-大災害を体験した人々の口承には人と人の心を結ぶ力、支え合う力がある。「言葉こそ生き抜く力」だった。
 編者は東京学芸大の石井正己教授(民俗学)と「やまもと民話の会」(庄司アイ代表)。石井教授はプロローグで、山元町の人たちと民話を語り、津波体験の朗読、紙芝居の上演、フォーラムなどを行ってきた経過を報告、「民話を通したふるさとの内発的な復興」を訴えた。
 やまもと民話の会ではこれまで3冊の震災の証言集をまとめた。「どす黒い大きな山が突進してきて、電柱を押し倒し、次の電柱にかかったのを見て、『ああっ、津波!』と気が付き『二階に上がれー、津波がそこまで来ているうー』と叫んだのです」「家は傾き、水は天井までになり、渦に入ったのです。まるで洗濯機の中のようなんです」と体験記を読む。中浜小は海まで400メートルほど。「この世の終わり」と思わせるほどの大津波に襲われたが、児童、教職員は屋上に避難して犠牲者は出さなかった。以前から津波の避難訓練をしていた。その体験をもとに紙芝居を作った。「子どもたちの命を守った中浜小は町の誇り」と言う。同小は廃校になったが、震災遺構として保存される。
 新地町では昔々、津波に襲われ、その地点まで鯨が津波で打ち上げられという「小鯨」とか、山に逃げて8000人が救われたという「八千山」の地名が残る。「伝説をおろそかにしてはいけない」と報告された。
 それらの体験記や資料を学校教育の場や図書館の活動でどう生かしていくのか。ひとごとではなく、大震災を体験した私たちの世代全体の課題だろう。在野で活動してきた民話の会の人たちの記録を読み、改めて考えさせられる。
 三弥井書店03(3452)8069=1836円。

河北新報
2019年4月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加