『右肩上がりの会社が必ずやっている現場ルール : 生産性が3倍になる!』
- 著者
- 金村, 秀一, 1973-
- 出版社
- 自由国民社
- ISBN
- 9784426125097
- 価格
- 1,650円(税込)
書籍情報:openBD
右肩上がりの会社になるための最重要ポイントは「とにかくやってみる」こと
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『右肩上がりの会社が必ずやっている現場ルール』(金村秀一著、自由国民社)の著者は、ウィルウェイグループ代表取締役社長。
同社はWEB制作、顧客管理、マーケティングサポート、飲食業、人材派遣業などさまざまな事業を展開し、右肩上がりの成長を遂げているのだそうです。
とはいえ決して順風満帆だったわけではなく、一時期は倒産の機器に陥ったことも。
しかし「どうせダメなら最後まであがこう」と、いいと思えることをすべて実践してみた結果、業績が上向き、V字回復を遂げることに成功したというのです。
本書で紹介されているのも、修羅場をくぐり抜け、右肩上がりの成長を遂げるために行なった方法の数々。
「環境整備」「数字」「できる社員像」「組織論」などについて、さまざまな角度から斬り込んでいるのです。
きょうは3章「できる社員がやっている10のこと」のなかから、いくつかの項目を抜き出してみることにしましょう。
とにかく「手足」を動かしてみる
素直に聞き入れる耳を持つ人は、間違いなく伸びるものだと著者は言います。
なにか頼まれてもその理由は聞かず、「とにかくまずやってみる」という姿勢が大切だということ。
そういう意味では、素直さも能力のひとつと言えるのかもしれません。
たとえば自分の名前を呼ばれたとき、ほとんどの人が「はい」と答えるはず。しかし、なぜ「はい」と言うのか、その理由を答えられる人は少ないのではないでしょうか。
現実問題として、「はい」と答えるそのわけを知らなくとも困ることはないからです。
ちなみに「はい」の語源は、拝借や拝見の「拝」からきているという説があるそうです。
つまり、「あなたの言うことを受け入れますよ。受け入れる準備は整っていますよ」という意味合いがあるということ。
このように、もともとの意味や意義はわからないにもかかわらず、当然のこととしてそれを行なっていることは、世の中にはたくさんあります。
なのに仕事となると、「なぜ、それをするのか?」「それをやることになんの意味があるのか?」などと疑問を感じてしまうことがあるわけです。
しかし著者によれば、なにより重要なのは「やってみる」こと。
とりあえずやってみる。
手を動かす。足を動かす。
(78ページより)
そうしてみれば、意外とできてしまうものだというのです。そして日ごろから手足を動かす訓練を行なっていると、確実に実行力は上がっていくもの。
「ああ、やればいいのだな」「とりあえずやってみよう」という、いい意味での「見切り発車」ができるようになるということです。(76ページより)
優秀な人はなにが違うのか?
会社には優秀な人と、残念ながらそうでない人がいます。
著者によれば、その違いは「打席数の違い」。仕事における打席数とは、「新しいことにチャレンジする機会、回数」のことだといいます。
著者は経験上、成功する確率はどんな人もだいたい同じで「2割5分」ほどだと感じているのだそうです。
どの人も同じ打率であることは間違いないものの、「打席数」が違うというのです。いうまでもなく、優秀な人ほど数多く打席に立っているということです。
優秀な人は打席に100回立つので、ヒットは25本。1000回打席に立てば、ヒットは250回。
一方、そうでない人が打席に立つ回数は30回程度なので、ヒットは7.5本。打席に多く立てば立つほど、成功する回数も増えるわけで、もとの出来がいいか悪いかは、あまり関係がないということ。
そして優秀な人は、打席に立ちことを厭わず、どんどんバッターボックスに立って、さまざまな球に挑戦するもの。
でも、そうでない人は「モチベーションが…」「ワークライフバランスが…」「メンタルブロックがかかってしまって」など、もっともな理由をつけ、打席に立つことを拒んだりするわけです。
つまり自分自身で、成功回数を減らしてしまっているのです。
ところで仕事をある程度続けていくと、自然とスキルやキャリアも上がっていくため、昔にくらべて打率が上がっているように感じるかもしれません。
しかし、実際には打率自体は変わらないのだといいます。
仕事ができるようになるということは、トーナメント表の上に進んだのと同じこと。当然、対戦相手も手強くなっていくのです。
入社当時はまず新入社員のトーナメントがあり、そこでナンバーワンになると、次に課長同士のトーナメントが行われます。もちろん、仕事の「質」自体は上がっていくでしょう。
ですが、打率という観点だけで考えると、スキルやキャリアが上がっても打率は変わりません。
(中略)年数が上がると仕事自体のクオリティは上がりますが、成功の回数はさして変わらないのです。(85ページより)
そのため、もし部下に早く一人前になってほしいなら、数多く経験させることが重要だと著者は主張しています。
20歳の社員と40歳の社員の違いは、単なる「経験の差」。
だとすれば、20歳の社員に成功も失敗もたくさん経験させるべきだという考え方。
40歳の人が20年間かけてやってきたことを20歳の社員が数年でやったなら、それだけ早く40歳の人の実力に追いつけるというわけです。(83ページより)
他から頭ひとつ抜きん出る存在になるには
右肩上がりでい続けるためには、他よりも頭ひとつ抜きん出た存在になることも必要。そして、そのための決め手となるのが、「時間の使い方」。
1日の時間は万人に同じく24時間なので、他人と同じ時間の使い方をしていたのでは、いつまで経っても差がつかないわけです。
そこで、私は「他人の3倍やる」ことを心がけています。 これは、「ランチェスター時間の法則」に基づくものです。 ランチェスター時間の法則では、「他人の3倍働けば、たいがい勝てる」と定義されています。
8時間労働で1時間休憩すると7時間。法則に則って計算すると、7×ルート3で12時間。毎日12時間働き続ければ、7時間労働の人の3倍働いたことになります。(88~89ページより)
とはいっても、プラスの5時間を捻出することなどできるのでしょうか?
このことに関して著者が勧めているのは、朝の時間を利用すること。事実、自身も日の出とともに起きているそう。
5時から18時まで昼食はとらずに仕事をすれば、それだけで18時間。あとは普段の行動を時間短縮することで、時間をつくっているのだといいます。
たとえば日ごろの行動で重要視しているのが「歩く速さ」。なるべく速く歩けば移動時間も短縮できるわけですが、そうすると生産性が上がるというのです。
そしてパソコンに関して注力したのが、タイピングの速度を上げること。その速度が速いだけで、仕事をこなすスピードが格段に上がるというわけです。
それだけでなく、他の人が3クリックでいくところを1クリックで終えることを心がけているそうです。
いつも速いギアをときに遅くする場合、エンジンに負荷はかかりません。しかし、いつも遅いギアを突然速くすれば、エンジンにかなりの負荷がかかることになります。
人間も同じで、いつでも速くできる状態を日ごろからつくっておき、時と場合に応じて遅く調整できる状態がベストだということです。(88ページより)
著者は本書について、本書は「会社で仕事がうまく回らない」「もっと効率的に仕事を進めたい」「会社に活気を取り戻したい」「職場の人間関係をよくしたい」「楽しく仕事をしたい」と考えるすべての人に役立つ内容だと記しています。
できるところから始めてみれば、きっと効果を実感できるはずだとも。
だからこそ、そうした悩みのある方にとっては参考になりそうです。
Photo: 印南敦史
Source: 自由国民社