<東北の本棚>福島の今 伝えるコラボ
[レビュアー] 河北新報
副題は「詩と写真でつづる3.11」。東日本大震災が引き起こした福島第1原発事故により、福島に住んでいた多くの人は故郷を奪われ、大切な家族と引き離された。現在も偏見に苦しめられている。
本書は家族を県外に避難させ、福島の今をつづる二本松市の詩人と、原発事故後の福島の姿を追う写真家のコラボレーションだ。この8年に何が起き、人々は何を思うのか。福島の現実を浮かび上がらせる。
タイトルになった詩「なじょすべ」(福島弁で「どうしよう」の意)で、詩人は福島の現状の厳しさを訴える。福島の農作物を食べてくれとは言えない、水を飲んでくれとは言えないとした上で呼び掛ける。「悩むこころに沿うてくれ/オレたちに欲しいのは/痛みを分かつこころだよ」
「ヒバクシャ」では「わたしたちはヒバクシャ/誰かを汚染する」「そんな存在になってしまったことが/つらい 悲しい 切ないよ」と被ばくした悲しみ、苦しみ、自分も加害者になるのではないかとの不安を描く。福島への理解のなさ、偏見は耐えがたい。「ただ一緒に泣くか」では「国と東電のせいだべしさ/好きでこったになったんでねえぞい!」と怒りをぶちまける。
写真家は事故後の風景や人々の生活を独自の視点でとらえる。一見美しい川の底には放射性物質が潜む。残された牛たちの表情はどこか悲しく感じられる。詩とのコラボで、被災者の心の内にも迫っていく。巻末に作詩年月日、撮影時期を記しているのも、福島の歩みを理解する手助けになる。
関さんは1951年生まれ。原発事故後に詩を書き始めた。山本さんは1953年長野県生まれのフォトジャーナリスト。
彩流社03(3234)5931=1944円。