『遠藤周作と探偵小説』
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『遠藤周作と探偵小説 痕跡と追跡の文学』金承哲著
[レビュアー] 産経新聞社
「第三の新人」を代表する遠藤周作は通常、日本でのキリスト教信仰の可能性を模索したカトリック作家として語られる。そんな正攻法の研究ではこぼれ落ちるものに光を当てようと、著者は遠藤作品と探偵小説の関係に迫る。
米作家ダシール・ハメットのハードボイルド小説を耽読(たんどく)し、仏犯罪学者の講演に足を運んだ遠藤の姿から浮かび上がるのは、彼の作品全体を貫く「痕跡の追跡」というモチーフ。代表作『沈黙』も、その観点から鮮やかに読み解く。〈私の小説も、人生も、やはりミステリー小説です〉と述べた作家の新たな魅力を掘り起こす、刺激的な論考だ。(教文館・3200円+税)