文化大革命五十年…楊継縄著、辻康吾編 岩波書店

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文化大革命五十年

『文化大革命五十年』

著者
楊継縄 [著]/辻 康吾 [編集]/現代中国資料研究会 [訳]
出版社
岩波書店
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784000613071
発売日
2019/01/30
価格
3,132円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

文化大革命五十年…楊継縄著、辻康吾編 岩波書店

[レビュアー] 鈴木幸一(インターネットイニシアティブ会長CEO)

 「文化大革命」から50年を経た。本書は、冷徹な視点を崩さず、始まりから終息に至る10年を詳述し、文革がその後の中国にもたらした歴史的意味を解き明かそうとした書だ。

 「中華人民共和国は中国の皇帝専制の土壌の上に構築されたソビエト式の権力構造であった」。毛沢東は「理」と「勢」を一身に集め、「帝王」であり、「聖人」だった。その毛沢東が「プロレタリア階級独裁下の継続革命」を実践しようと大衆を扇動し、「造反派」をつくり、劉少奇を始めとする権力の中枢にあった実力者や官僚集団を粛清しようとした大乱が、文化大革命である。毛沢東、造反派、官僚集団という3者間の過激な暴力が前面に出た血なまぐさい闘争は、官僚集団の勝利に帰す。

 文革以後、トウ小平の下、経済改革の道を邁進(まいしん)、世界第2位の経済大国となった中国だが、政治改革は実施されていない。一党独裁と高度な集権化は維持され、習近平体制では、神格化された毛沢東時代の権力統制を踏襲するような手法すら、目につくようになっている。

 トウ小平以来の経済改革は、選択的に市場経済のメカニズムを導入した「社会主義市場経済」とされたが、実態は、官僚集団、権力集団の利益を守るための「権力市場経済」であると著者は指摘する。文革という大乱を経験しながら、政治体制、イデオロギーは変わることがなく、依然としてマルクス主義、毛沢東思想、つまり一党独裁、権力至上主義だ。文革の最終的な勝利者となった官僚集団が「文革の責任の追及権と改革開放の主導権さらに改革の成果の分配権を掌握した」のである。

 本書は、「造反派」による大衆闘争によって中国全体に広がった過激な暴力の実態を詳述することに始まり、林彪の死、四人組の失脚、造反派に対する徹底した摘発・審査・批判が繰り返された文化大革命とその後の歴史に踏み込む。現在の中国を見つめ直す機会を与えてくれる書である。現代中国資料研究会訳。

読売新聞
2019年4月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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