インソムニア…辻寛之著

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インソムニア

『インソムニア』

著者
辻寛之 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912697
発売日
2019/02/20
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

インソムニア…辻寛之著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 第二十二回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。実力派の新人作家を送り出してきたこの賞の歴史のなかでも、本書はとびきりの力作であり、勇気ある異色作だ。

 アフリカ大陸中央部の国・南ナイルランドに派遣されたPKO部隊の陸上自衛官七名。その一人は現地で銃撃を受けて死亡、帰国後さらに一人が自殺を遂げる。防衛省陸上幕僚監部衛生部でメンタルヘルス官として勤務する神谷啓介は、自身も自衛官だった兄を自殺で失っており、殉職した二等陸曹の父親の懇願を受けて、現地で何があったのか、公式発表からは切り捨てられている事実をつかもうと調査を始める。しかし、残った五人の証言はそれぞれに食い違っていた。何が彼らの身に起こり、何故に彼らはそれを隠し、苦しんでいるのか。

 藪(やぶ)の中の出来事が少しずつ立ち現れ、ついに全貌(ぜんぼう)が見えたときの驚愕(きょうがく)と戦慄(せんりつ)。背負うべき真実の重み。それは異文化のなかで平和維持活動を行うことの困難の重みだ。読後、私はタイトルの意味(不眠症)に納得して痛いほど膝を打った。ミステリーファンには本年必読の一冊だ。(光文社、1500円)

読売新聞
2019年4月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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