死 文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション…東雅夫 編・註釈、玉川麻衣 絵 汐文社

レビュー

9
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

死 内田百閒・林芙美子ほか

『死 内田百閒・林芙美子ほか』

著者
内田百閒 [著]/林芙美子 [著]/東雅夫 [編]/玉川麻衣 [イラスト]
出版社
汐文社
ISBN
9784811324852
発売日
2019/03/29
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

死 文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション…東雅夫 編・註釈、玉川麻衣 絵 汐文社

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 この絢爛(けんらん)たる怪奇と恐怖のセレクションは、二〇一七年三月に第一期『夢』『獣』『恋』『呪(のろい)』『霊』の全五巻が出揃(そろ)い、昨年七月に第二期の『影』が、今年三月に『厠(かわや)』と『死』が刊行されて第二期全三巻が完結した。八巻という末広がりの巻数になったところだし、平成から新たな元号・令和の時代にも三期、四期と続きますようにと期待を込めて、このタイミングでご紹介させていただきます。

 総ルビ、懇切丁寧な注釈と著者プロフィール付きで、仕様こそ確かにジュニア向きではあるが、内容は大人の活字好きの方々をも唸(うな)らせる充実ぶりだ。芥川龍之介、泉鏡花、川端康成、太宰治、谷崎潤一郎、夏目漱石、林芙美子、火野葦平、宮沢賢治――と収録作家を列記していけば、国語の教科書? と思うかもしれない。しかし、これらのまごうことなき文豪の作品でも、この八巻に採られているものを小中学校の国語の授業で読んだ覚えのある方はまずおられないと思う。これに内田百●、江戸川乱歩、渋澤龍彦、日影丈吉、大坪砂男と続けば、このラインの愛好家は編者の眼差(まなざ)しの向くところに「なるほど」と膝を打つ。

 小川未明、松谷みよ子という児童文学の巨星はコンセプトの核だし、『恐怖対談』というユニークな対談集があるほどの恐怖譚(たん)愛好家だった吉行淳之介、実は空飛ぶ円盤に強い興味を抱いていたという意外な一面を持つ三島由紀夫の収録作は、これまでのイメージをひるがえす新鮮な驚きを生むことだろう。ネット上で一時期「予言的な文言が含まれている」と話題になった西條八十の『トミノの地獄』をまるごと注釈付きで読めるのも嬉(うれ)しい。

 怪談は、人が何を求め、何に憧れ、何を夢見ているのかを、暗黒の鏡像として露(あら)わに映し出す。願わくば、このセレクションを全ての学校図書室に! 柔らかな魂の成長に、必ず寄与してくれるはずである。(●は「もんがまえ」に「月」)

読売新聞
2019年4月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加