<東北の本棚>連携生かして情報共有
[レビュアー] 河北新報
東日本大震災からの復興途上にある被災地。地域主体のまちづくりを進める上で、「市民参加」「協働」「中間支援」の三つは、大きなキーワードとなった。それぞれの立場でまちづくりに参画した6人が、研究者と実践者双方の視点で経験やそこから得た知見をまとめた。災害が多発する日本の未来に向けて、多くの教訓が盛り込まれた一冊。
東松島市は、独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携、国内外の復興に関する知恵を共有した。JICAの地域復興推進員として、野蒜・宮戸地区を中心に支援活動を行った斉藤弘紀氏は「まちづくり協議会と支援団体の役割」と題し、コミュニティー主体のまちづくりに有効な情報共有の仕組みを論じた。
インド洋大津波で被害を受けたインドネシアのバンダ・アチェ市と東松島市が進める相互復興モデル構築プロジェクトの一環で、斉藤氏はアチェ市の現地調査などを行った。その結果を受けて「インターネットなどのツールではなく人を介在して情報を共有した方が、住民のまちづくり活動の参加意欲が高まる」と指摘。「情報を適切に取り扱う人材としての役割が、支援団体の担う新しい機能の一つになる」と強調した。
2008年から15年まで多賀城市市民活動サポートセンターに従事した桃生和成氏は「震災後の市民活動・NPO支援センターの役割とネットワーク」のテーマで、中間支援組織の活動をまとめた。「スタッフが平時から独自のネットワークを構築し、それを生かすことが必要だ」と述べた。
編著者の風見氏は宮城大事業構想学群長、佐々木氏は同大事業構想学群准教授。
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