【聞きたい。】アンドルー・B・アークリーさん 元留学生が見続けた陛下
[文] 喜多由浩(産経新聞社 文化部編集委員)
□『陛下、今日は何を話しましょう』
「『マイ・ネーム・イズ“じぃ”』。浩宮さま(現天皇陛下)は、ニコニコしながら私に、そうあいさつをされた。誰にでも気さくで、穏やかで、笑顔を絶やされたことがない」
昭和50年、オーストラリアから学習院高等科に留学したアークリーさんは、浩宮さまと「地理研」で一緒になり、飾らない人柄に魅せられる。“じぃ”とは、盆栽がお好きだった浩宮さまに学友がつけた秘密のニックネーム。ご自身も気に入られていたという。
やがて、お住まいの東宮御所に招かれたり、英会話のお相手を務めるなど親交を深めてゆく。訪問の際の差し入れは、浩宮さまがお好きな「とんかつ」。平成2年に秋篠宮さまが結婚された後に、親しい友人らが企画したパーティーでは、皆で酔っ払ってしまったことも。
「陛下(当時、皇太子さま)はとても酒がお強く、どんなに飲まれてもめったにお顔に出ない。お酔いになった姿を拝見したのはこのときが初めてでしたね。(弟宮の)秋篠宮さまのご結婚が感慨深かったのだと思います。陛下がお部屋へ退かれた後、秋篠宮さまが持ってこられたメコンウイスキーを飲んだ私たちはもうぐでんぐでん…」
ご成婚(平成5年)後の地理研のOB会では、雅子さま(現皇后陛下)を紹介されている。
「お妃候補の名前は何人も挙がりましたが、陛下のお気持ちはずっと“雅子さまひと筋”だったと思います。ご婚約の会見で『僕が一生守りますから』と力強くおっしゃった通り、ご家庭をとても大切になさっている。その分、私たちがお目にかかれる機会が減ってしまったのは、少し残念ですけどね(苦笑)」
いよいよ、令和の時代。「陛下は、生まれながらの『象徴天皇』。庶民感覚を持ち、家族の温かさもご存じです。新たな時代の皇室のあり方を示してくださるでしょう」(すばる舎・1500円+税)
喜多由浩
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【プロフィル】Andrew.B.Arkley
1958年、豪メルボルン出身。交換留学生として学習院高等科に留学。東京外大を出て鉱山会社などに勤務。著書に『ぼくの見た皇太子殿下』。