【気になる!】文庫 『色ざんげ』
[レビュアー] 産経新聞社
希代の女流作家が昭和初期に執筆した代表作が新たに文庫化された。
妻子あるパリ帰りの洋画家、湯浅譲二と彼を翻弄する年若い高尾、その友人で「夕顔の花のよう」なつゆ子、湯浅の絵のファンだというとも子…3人の令嬢たちとの破天荒で凄絶(せいぜつ)、スリリングな恋愛模様を描く。
宇野が一時ともに暮らした画家、東郷青児が以前起こした心中未遂事件の顛末を直接聞き、小説化。緊迫感にあふれ、ページを繰る手が止まらない。「先生と私が呼ぶのは宇野千代先生だけ」と公言する作家、山田詠美氏と、尾形明子氏の解説も読み応えがある。(宇野千代著、岩波文庫・700円+税)