まともがゆれる 常識をやめる「スウィング」の実験…木ノ戸昌幸著 朝日出版社

レビュー

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まともがゆれる

『まともがゆれる』

著者
木ノ戸昌幸 [著]
出版社
朝日出版社
ISBN
9784255010977
発売日
2019/01/23
価格
1,684円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

まともがゆれる 常識をやめる「スウィング」の実験…木ノ戸昌幸著 朝日出版社

[レビュアー] 一青窈(歌手)

 私が恵比寿のギャラリーでXLさんの絵に一目惚(ぼ)れして買ったのは昨年の11月のこと。眺めてるとむくむく元気が湧く。誰の模倣でもなくただ心のままに描いた牛の絵だ。まっさらな作品を目の当たりにして、表現者として羨ましい限りの姿勢に心が洗われた。

 この本は彼を含め、明日のこともわからない今を体ひとつで生きる「人間丸出し」の人たちの毎日の活動が描かれている。ちょっとした言葉遣いで、人は気分が良くなったり落ち込んだりするが、そのちょっとした匙(さじ)加減で物事は楽しくうまく進むんだよ、と道標を示してくれるのが著者であり、この障害福祉NPO法人「スウィング」を取り仕切る代表の木ノ戸昌幸さんだ。

 社会からちょこっとはみ出してしまった人をあえて褒め言葉として「ヘンタイ」と称したり、理不尽を笑いに変え、<人間はちゃんと、失敗するようにできている>と言い切ってくれたら励まされない訳がない。なんてったって30人ほどの施設利用者の中にいる、まさおさんの失敗談を人に分かりやすく説明したいからという理由で“親の年金をつかってキャバクラ”という書にしたため、ギャラリー展を企画するナイスなセンスの持ち主なのだ。こういったアート創作の発表以外にも、戦隊ヒーローに扮(ふん)して街の清掃をしたり、京都の街案内のボランティアといったジャンルに捉われない活動をしている。

 <戦争やあらそいごとが、世界中からなくなって、あまった戦車で遊ぶんですの。(中略)危ないですので、気をつけてください。戦車/Q/2012>この詩を読んで笑みがこぼれた。代表にも会いたくて京都のアトリエを訪問したのがつい先日。天使と呼ぶにはあまりにおじさんであったXLさんと念願のツーショットも撮れた! 生きやすさの幅を広げ、自己規制を解除し続けられるように「ギリギリアウト」を狙うというスウィングのモットーが格好イイ。貴方(あなた)もぜひこの本で勇気をもらってください。

読売新聞
2019年5月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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