小説 第4次産業革命…藤野直明、梶野真弘著 日経BP社

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小説 第4次産業革命 日本の製造業を救え!

『小説 第4次産業革命 日本の製造業を救え!』

著者
藤野 直明 [著]/梶野 真弘 [著]
出版社
日経BP
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784822289652
発売日
2019/04/19
価格
1,760円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

小説 第4次産業革命…藤野直明、梶野真弘著 日経BP社

[レビュアー] 坂井豊貴(経済学者・慶応大教授)

 カンや経験による暗黙知は、便利なものである。生産現場では、職人のカンや熟練のマネジャーの経験から、おおよその生産計画を立てられたりもする。しかしそれは綿密なものではないし、他者に理由を説明できるものでもない。もはやそれでは世界に通用しないというのが、第4次産業革命が起こした変化である。本書はその変化と、変化に対応する歩みとを、小説のかたちでえがく。

 主人公の藤堂は、高い技術をもつ部品メーカー、ケイテックの二代目社長。あるときケイテックは、ドイツのボルツ社から連絡を受ける。ボルツ社は、世界中のメーカーから部品を調達しており、ケイテックを候補に考えているのだという。願ってもない話に藤堂は喜ぶが、ボルツ社はケイテックに、見積もりと生産計画を三日以内に提出するよう求めてきた。ところがケイテックにはこれができない。これまで細かな生産データを取っていなかったから、ボルツ社への工程を、ケイテック全体の工程に組み入れることを、うまくシミュレートできないのだ。

 危機感をもった藤堂は、生産データを取り、暗黙知を形式知に変えるべく、大がかりな社内改革を始める。そうした藤堂の奮闘のさまから、第4次産業革命の姿が見えてくる。それは世界中で分業が進む流れであり、言語化と数値化が競争に不可欠となった時代のおとずれである。言語と数値によるコミュニケーションができなければ、分業のパートナーには選ばれないのだ。

 本書には脚注やコラムがあり、そこでは小説から離れて、製造業や組織論の解説がなされている。そうした知識を得ながら読む藤堂とケイテックの挑戦は、いっそう味わい深い。結果、本書は純粋な小説とも解説書とも異なる、独特な面白さのある作品に仕上がっている。著者は二人とも製造業のコンサルタント。この本の「ものづくり」からは、製造業的なクラフトマンシップを強く感じる。

読売新聞
2019年5月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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