パノニカ ハナ・ロスチャイルド著

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パノニカ

『パノニカ』

著者
ハナ・ロスチャイルド [著]/小田中裕次 [訳]
出版社
月曜社
ISBN
9784865030693
発売日
2019/02/27
価格
2,916円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

パノニカ ハナ・ロスチャイルド著

[レビュアー] 宮下志朗(仏文学者・放送大特任教授)

 パノニカ(略してニカ)とは、孤高のピアニスト、セロニアス・モンクなどの守護女神として知られた、ロスチャイルド家出身のパノニカ・ド・コーニグズウォーター(1913~88)のこと。モンクの「パノニカ」、ホレス・シルヴァーの「ニカズ・ドリーム」等(など)、彼女に捧(ささ)げられた曲は多い。一族出身の映像作家が、ジャズに生きた大叔母の生涯をたどった著作だが、大戦中の自由フランス軍としての活動など、前半生も詳しい。

 麻薬漬けの天才チャーリー・パーカーが、ニカのホテルで迎えた死、モンクの身替わりにマリファナ所持を認めたニカの逮捕・裁判も詳しく語られる。パノニカが実は蝶(ちょう)ではなく蛾(が)の名前だと知れば、ソニー・ロリンズが捧げた「プア・バタフライ」の聴き方も変わる。ジャズマニアの金持ち女という単純な見方ではなく、男系絶対優位のロスチャイルド家に生まれ、疎外された女性の生き方として共感をもって描かれている。

 イーストウッドやロリンズへのインタビューは、著者が英BBCで制作したドキュメンタリー「ジャズ男爵夫人」でも見られる。小田中裕次訳。(月曜社、2700円)

読売新聞
2019年4月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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