原典 中世ヨーロッパ東方記 高田英樹編訳

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原典 中世ヨーロッパ東方記

『原典 中世ヨーロッパ東方記』

著者
高田 英樹 [編集、訳]
出版社
名古屋大学出版会
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784815809362
発売日
2019/02/10
価格
12,960円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

原典 中世ヨーロッパ東方記 高田英樹編訳

[レビュアー] 宮下志朗(仏文学者・放送大特任教授)

 13世紀、遥(はる)か東方から強大な騎馬民族がヨーロッパに侵入した。モンゴル人である。キエフを攻略、ポーランド、ハンガリーを襲い、アドリア海を渡るかと、西欧の人々は一時恐れおののいた。ギリシア神話の奈落タルタロスから突如として現れたかに思われ、「タルタル(タタール)人」と命名された民族への恐怖心はさまざまな痕跡を残した。

 本書は、その不安を表象する史料を絵画・地図も含めて集成し、本邦初紹介のものも多い。有名な『デカメロン』が、修道士の東方紀行(のパロディー)という視点から2話訳出されているのも新鮮だ。フィレンツェのサンタ・マリーア・ノヴェッラ教会の「スペイン礼拝堂壁画」もユニークな史料。そこに描かれたとんがり帽で弁髪の人物を巡る推理に引き込まれ、また現地を訪ねたくなった。

 パリス『大年代記』では、彼らは「犬・人の肉を」貪(むさぼ)り食うとして挿絵を添え、野蛮さを強調している。先日、生肉「タルタルステーキ」を食したが、この呼称は、生肉を食べるタルタル人の風習に由来するらしいと気づいた。(名古屋大学出版会、1万2000円)

読売新聞
2019年5月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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