ありがとうを言えなくて 野村克也著

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ありがとうを言えなくて

『ありがとうを言えなくて』

著者
野村 克也 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784065150405
発売日
2019/03/29
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ありがとうを言えなくて 野村克也著

[レビュアー] 戌井昭人(作家)

 元プロ野球選手で元監督のノムさんこと野村克也が亡くなった妻沙知代への想(おも)いを綴(つづ)っている。

 沙知代夫人は歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで、一時はテレビに出たり、マスコミを賑(にぎ)わしたりしていたので記憶に残っている方も多いだろう。ノムさんは本書で「一般論から言ったら、最低の女房だろう。見栄っ張りで、金に汚く、傲岸不遜。悪妻の見本のような女だった」と語っている。確かに彼女のエピソードを読んでいるとたまげることばかりだ。

 コロンビア大学卒という経歴や、出自も偽っていたという夫人、問い詰めれば「あんたには関係ないでしょ!」と怒ってくる。また夫人のせいで、ノムさんは二度も監督をクビになっている。

 良妻賢母などは、どこ吹く風だが、別れようと思ったことは一度もないという。

 沙知代夫人の存在が、ノムさんの足りない何かを埋めていた。それは父性かもしれないという。沙知代夫人も足りない何かをノムさんに埋めてもらっていたのだろう。

 他人から見れば不思議な夫婦ではあるが、二人の中には、確実に大きな愛があるようだ。(講談社、1300円)

読売新聞
2019年4月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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