今日は「森林の日」。 忙しい日常でも立ち止まって「今」を愛おしもう
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
4年に一度の閏(うるう)年を除けば、1年は365日。
しかし年齢を重ねるごとに、1日、1週間、1カ月、そして1年のすぎる感覚が早くなっていると感じている方も少なくないはず。
それどころか年配の方の口からは、「これからもっと早くなるよ」などという意見が出たりもします。
そう考えると、仕事や雑事に追われてバタバタと過ごすうち、あっという間に5年、10年と時間は過ぎていってしまうのかもしれません。
それならば、過ぎゆく日々をゆったりと見なおしてみよう。『日本の365日を愛おしむ ―毎日が輝く生活暦―』(本間美加子 著、東邦出版)は、そんな想いから生まれたのだそうです。
5月20日はなぜ「森林の日」?
一年365日、それぞれにちなむ年中行事や記念日、季節のうつろいをあらわす言葉などを紹介しています。暮らしに彩りを添える花鳥風月や旬の食材も取り上げました。
ただ、山形県で生まれ育ち、現在は東京都で暮らす私が紹介する365日ですので、年中行事の内容が違う、季節感がズレている、と感じる方がいらっしゃるかもしれません。
その相違点は、日本の豊かな多様性のあらわれとしてたのしんでいただければと思います。(「はじめに」より)
和の伝統、日本文化を中心に幅広いジャンルの執筆・編集を行っているフリーライターである著者は、こう記しています。
さて、きょう5月20日については、どのようなことが書かれているのでしょうか?
皐月 5月20日
元日から………139日
大晦日まで……225日
[二十四節気]立夏
[七十二候]末候 竹笋生ず
キーワード:森林浴
森林で心が安らぐ理由
日本は国土の約7割を森林に覆われた、世界有数の森林国。
私たちが緑豊かな森林の写真などを見て安らぎを感じるのは、古来、山や木々と共に暮らしてきたからなのかもしれない。著者はそう推測しています。
事実、森林に入り、胸いっぱいに空気を吸い込むと、とても爽やかな香気が漂っていることに気づくはず。
それは、樹木の発する揮発性物質・フィトンチッド。フィトンチッドは、植物が病気や害虫から身を守るために出していると考えられていますが、人間にとっては精気の塊。リラックス効果が高く、ストレスを軽減してくれるわけです。
なおフィトンチッドをふんだんに浴びて心身を保養する「森林浴」は、1982年(昭和57)年、林野庁によって提唱されたのだとか。
いまや日本ではすっかりおなじみですが、近年、そのことばと健康効果は世界的に広まっているのだそうです。
●今日をたのしむ
【森林の日】 5(=「森林」の字は5つの「木」で成り立つ)月 20(=「森林」の総画数は20画)日から制定
【東京港開港記念日】 「東京港」は隅田川河口を中心とする港。名古屋・横浜・大阪・神戸と並ぶ日本五大港のひとつで、1941(昭和16)年の今日、外国貿易港に指定されました。
【成田空港開港記念日】 くしくも日本を代表する空の港も今日が記念日。1978(昭和53)年の今日、「新東京国際空港」として開港しました。
(167ページより)
タイトルになっている「愛おしむ」には、「惜しんで大切にする」という意味があるのだそうです。
毎日を「特別な日」にするのは難しいとしても、「愛おしむ」ことはできるはず。
そしてそれは、すさまじいスピードで情報が駆け巡り、せわしなく世界が動き続ける現代だからこそ必要な心構えなのではないかと著者。
たしかに、慌しい日常のなかで少し立ち止まりたくなったとき、本書を開いてみれば気持ちが落ち着くかもしれません。
しかも普遍的な内容であるだけに、いつの時代にも気づきを与えてくれるはず。そういう意味で、ぜひとも本書を手元に置いておきたいところです。
Photo: 印南敦史
Source: Amazon